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元FC琉球・宮城晃太の新たな挑戦 カンボジア1部リーグのコーチに<ブレークスルー>


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青年海外協力隊のスポーツ隊員としてカンボジアで指導していた頃の宮城晃太さん=2020年3月

 バスケットボール女子Wリーグでトヨタ自動車を初優勝に導き、県勢初のプレーオフ最優秀選手賞(MVP)に輝いた安間志織(26)=北谷中―福岡・中村学園女子高―拓殖大出。北谷中3年時には中心選手として女子県勢初となる全中制覇を達成した沖縄女子バスケ界のパイオニアの一人だ。しかし、2017年にWリーグデビュー以降は「賞を取れるような選手じゃなかった」とプレー、精神の両面で壁にぶつかっていた。急成長の秘けつは、3点弾の成功率向上と司令塔としての自覚がより強まったことにある。

■現地に溶け込む

 FC琉球に入団した2016シーズン、同じ時期に加入したブラジル人選手との出会いが海外へ目を向ける原点に。四六時中ともに過ごすうちにポルトガル語が通じるようになり「小さな外国体験だと感じた」。これが言葉の違いを苦にせず、学びながら積極的にコミュニケーションを図る性分の基になった。

 プロとしては1シーズンで引退。FC琉球のジュニアチーム監督などを経て、19年1月末に青年海外協力隊員としてカンボジア・クラチェ州でサッカー指導の任務に就いた。

 当地で用いられるクメール語は、赴任後すぐの大会遠征で急速に上達した。木造の高床式の住まいに約20人で選手スタッフと寝食をともにし、現地語のニュアンスを実地で体感。スケジュール管理の仕方などスポーツ文化の違いを知る機会に。それでも「時間をかけて理解していこう」と受け入れ溶け込もうとした。およそ半年後には夢の中でもクメール語を話すようになっていたという。

 練習は人数集めから始まり、選手やコーチへの指導、小学校での体育の授業、夏休みを利用したスクールの立ち上げなど精力的に活動。オフにも社会人の練習に参加するなどサッカー漬けの日々だった。

 昨年3月、コロナ禍で一時帰国したが、12月に再び現地に赴き、任期を全うした。感想は「やり残したことだらけ」。練習に向かう姿勢や用具の扱い方など教え足りないことばかりだった。それでも任期中にU18代表を1人、代表候補の育成校に4人、プロリーグ下部に1人を輩出。他の州と比べて際立った数字だった。

■橋渡し役に

5月からカンボジア1部のアンコールタイガーFCのアシスタントコーチに就任する宮城晃太さん=4月21日、糸満市

 帰国後は県内のフューチャーFCでジュニアコーチを務めたが、3月末にアンコールタイガーからAC就任依頼を受けた。「待っていた」と二つ返事で引き受けた。クメール語を話せる外国籍コーチは貴重な存在で、スペイン人監督と選手の橋渡し役として期待されている。「年齢が近い選手が多い。一緒に過ごすことで信頼を得たい」とイメージしている。

 クラブは世界遺産のアンコールワット遺跡群で知られるカンボジア北西部シエムレアプを本拠地とし、国内リーグで年間最多の観客動員数を誇る。元日本代表の本田圭佑が実質的なオーナーのソルティーロ アンコールFCと同じく、日本人がオーナーを務めている。

 昨年は13チーム中7位だ。今季はコロナ禍で中断しているが、ここまで4試合を終えて首位に立っている。リーグは5月下旬に再開する見込みだ。「リーグで優勝して、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で日本のクラブと戦いたい」と夢は広がる。

 国際サッカー連盟(FIFA)ランキングでカンボジアは173位。底上げには国が取り組むべき教育の課題も多いが「これからもカンボジアと関わってやれることをしたい」と奮闘を続ける。

 活動の様子は、毎週月曜夕方放送のFM沖縄「オリオンびあぶれいく」で随時報告される予定だ。

(古川峻)