「沖縄の選手も強いこと示したい」働きながら競技探求 座間味里奈(陸上・女子100メートル)


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追い風参考記録ながら、100メートルを11秒98で駆けた座間味里奈=1日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム

 県勢の女子100メートル選手では数少ない、全国上位を狙える11秒台の記録を持つ座間味里奈(22)=宜野湾中―沖縄尚学高―九州共立大出。今春、陸上クラブや学童を運営するアスリート工房(譜久里武代表)に就職し、社会人としての一歩を踏み出した。小中学生に指導をしながら、鍛錬を続ける。自己ベストは11秒90で、県記録11秒64の更新を目標に置く。陸上では高校や大学を卒業後も実業団に所属し、一線で競技を探究し続けられる環境は少ないため「結果で恩返ししたい」と意気込む。

 もともと大学卒業後は体育教師を志していたが昨春、翻意のきっかけが訪れる。コロナウイルス禍で大学での練習が難しくなり、帰省して地元の宜野湾市立グラウンドで練習している時だった。男子100メートルで全国トップ級の大会に出場するアスリート工房の与那原良貴らと出会い、一緒に練習するようになった。

 競技以外でも、陸上教室で子どもたちに教える機会も。「かみ砕いて教えることで自分の復習にもなる」と相乗効果を感じた。仕事をしながら、自身のレベル向上に真剣に向き合う与那原らを見て「居心地がいい」と感じるように。「年齢的に陸上で勝負できる期間は限られている。目の前のことに集中し、このチームでもっと結果を出したい」という思いを強くし、自ら要望して所属した。

 「トップアスリートということが仕事につながる環境をつくりたい」と企業理念を掲げる譜久里代表は「常に速くなりたいという探究心があり、いつも笑顔で周りから応援される雰囲気がある」と座間味を評価する。体の強さを生かした高速ピッチに加え「ストライドや後半の展開を改善すれば、11秒5~6はいくのではないか」と県記録更新に期待を寄せる。

 現在、陸上教室や学童で働きながら、週5日練習に励む。今月1日に沖縄市であった記録会では追い風3.5メートルの参考記録ながら11秒98の好タイムで走り、出場選手中ただ一人の11秒台を記録した。ただ「追い風3メートル以上ならもう少し出したかった。まだまだですね」と向上心は尽きない。

 高校までは「全国大会に出られれば満足というレベルだった」と振り返るが、大学4年だった昨年は日本学生対校選手権でファイナリストになった。沖縄の女子スプリント界で、全国トップで戦える選手が少ない中で「先頭に立って、沖縄の選手も強いんだということを示したい」と力を込めた。

(長嶺真輝)