【識者談話】「世界遺産登録はゴールではない」今後の課題は? 吉田正人筑波大教授<沖縄・奄美 世界遺産>


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吉田正人氏

 日本自然保護協会の研究員として1990年、世界遺産条約の批准推進を開始した際、白神山地とともに南西諸島を自然遺産の候補地に挙げた。2003年には国内の自然遺産候補地検討会に委員として参加し、琉球諸島を候補地として選定した。奄美大島・徳之島・沖縄島北部および西表島が、世界遺産リストへの登録の評価を受けたことを心から喜びたい。

 2018年に登録延期された際は、世界遺産地域が24に分断され、緩衝地帯も不十分だった。19年の推薦書では地域の分断を修正し、緩衝地帯の外側の広域な地域を「周辺管理地域」と位置付けた。これらの広域な包括的管理計画策定が評価されたと思われる。

 世界遺産登録はゴールではなく、奄美・琉球列島の生物多様性を将来に伝えていくためのスタートにすぎない。今後は新たな外来種の導入を防ぐ対策が求められる。観光管理は交通事故対策など希少種にインパクトを与える観光の拡大を防ぎ、質の高い自然体験ができる体制を全域で整える必要がある。将来的には世界遺産地域を海域に拡張し、豊かな海の生物多様性を次世代に伝えることも目指すべきだ。
 (世界遺産学)