【識者談話】沖縄観光「量から質」への転機に 武田智夫氏(りゅうぎん総合研究所調査研究部長)


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武田智夫氏(りゅうぎん総合研究所調査研究部長)

 2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界文化遺産に登録された際に、国内外から沖縄に注目が集まった。「沖縄・奄美」が自然遺産に登録されれば、県経済にとっては間違いなくプラスといえる。沖縄のレジャーは海の印象が強いが、勧告・登録を通して山や緑への関心も高まり、観光コンテンツの掘り起こしにもつながる。新型コロナ感染症が落ち着けば、沖縄の新たな魅力として、観光客誘客の好材料となるだろう。

 一方で、登録されれば今の自然環境を守る責任が生じてくる。誘客と自然保護とのバランスが求められ、産学官民挙げた中長期的なビジョンに基づく取り組みが求められる。

 2018年に調査で訪れたハワイでは、富裕層の観光客は自然保護への関心や意識が比較的高いという。沖縄でも消費単価を上げるために、富裕層の誘客が課題となっているが、手付かずの自然が残っていることを付加価値として、アクティビティーに高い料金設定をすることができれば、入場制限も可能となり、自然環境の保護にもつながるかもしれない。

 近年はSDGs(持続可能な開発目標)への世界的な関心も高い。こうした潮流は、自然に配慮したグリーンツーリズムの取り組みの追い風になるだろう。沖縄の観光における「量から質」への転機につながることを期待したい。