酒類提供停止見送り 飲食業界の同意得られず 県説得も不安解消できず


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県飲食業生活衛生同業組合を訪れ、県の方針を説明する大城玲子保健医療部長(左から3人目)と嘉数登商工労働部長(同4人目)ら=18日、南風原町(県飲食業生活衛生同業組合提供)

 県は18日の新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、政府に対する緊急事態宣言の対象追加と酒類提供を停止する措置について、正式決定を19日に先送りにした。18日中に措置を決める予定だったが、経済界の反対意見を受けて「丁寧に説明する必要がある」(謝花喜一郎副知事)と判断した。急きょ、県幹部が飲食業団体を直接訪ねるなど、異例の対応で理解を求めたものの、同日中にすべての団体からの同意は得られなかった。

 経済界への説明を終え、閉庁時間が過ぎた午後6時半に、両副知事を含めた幹部が庁内の会議室に集まった。玉城デニー知事もオンラインで参加し、あらためて対応を協議した。会議を終えた謝花副知事は「いろいろ情報共有したが、酒類に関しての結論もまだ。明日また知事の都合の合間を見ながら検討する」と述べるにとどめた。

 県関係者によると、県首脳は16日の時点で、西村康稔経済再生担当相との面談を検討していた。当初は玉城知事の17~19日の上京日程に合わせ、知事が西村氏に緊急事態宣言への追加を直接求める案も浮上したという。だが、17日の経済対策関係団体会議で経済界の不満が噴出したことで変更。西村氏と玉城知事は18日に面会したものの「意見交換」にとどまった。

 面談後、玉城知事は、飲食店などへの営業時間短縮要請に触れ「性善説に立って(時短要請に)協力いただきたいと願うが、そうではない方々には、それなりの措置を取る」と述べた。時短要請に応じない店舗の名前公表や、過料などを科す考えを示した格好だ。

 妥協点なし

 知事の発言は、経済界を意識したものとみられる。経済界は時短に応じている店舗と、そうではない店舗で、強い不公平感が生じている。その解消に向けて、あえて強い姿勢を示すことで緊急事態宣言の追加要請や酒類提供停止に理解を促す目的があるとみられる。

 さらに、副知事、商工労働部長、保健医療部長が経済団体に電話を掛けたり、直接赴いたりして県の考え方をあらためて伝達した。経済界の中には理解を示す団体もあったが、引き続き反対を示す団体もあり、考え方に差がある。

 南風原町の県飲食業生活衛生同業組合には嘉数登商工労働部長と大城玲子保健医療部長が訪ね、厳しい感染状況などを説明した。同組合の鈴木洋一理事長は「誠意は伝わった」と一定評価する一方、「妥協点はない。既に時短営業が2カ月近くになり、さらに酒類販売がだめになれば、今までで一番厳しくなる」と話し、あらためて反対した。

 「丁寧な説明」

 ある県幹部は「事業者の意見を無視して強行突破すると反発になり、憎しみに変わることもあるので、慎重に丁寧に説明する必要がある」と語る。ただ、県幹部の中には、事業者に反対意見はあっても、現状では両方の措置を取らざるを得ないとの考えが支配的だった。

 18日の決定をいったん見送ったことで県側は新たな措置への「丁寧な説明」の姿勢を見せたものの、急な方針を転換で生じた事業者の不安は十分に解消されていない。県の事前調整不足も否めず、新たな措置の決定後も事業者支援策とともに、厳しい状況を丁寧に聞き取ることが求められる。
 (池田哲平)