沖縄に移住「車いすトラベラー」が発信 人に優しい観光を


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「沖縄観光の魅力を、僕と同じ車いす利用者に伝えたい」と語った、「車いすトラベラー」の三代達也さん=4月7日、糸満市

 【糸満】「沖縄観光の魅力を、僕と同じ車いす利用者に伝えたい」。車いすトラベラーとして活躍している三代(みよ)達也さん(32)が3月、神奈川県から糸満市に移住し、車いす利用者の目線で沖縄の魅力を動画やSNSで発信している。「障がいを負ったときは、自分の人生を諦めた。でも人の優しさに触れて挑戦することを覚えた。外出が楽しくなって旅をすると、自分の世界がさらに広がった」。自宅にこもりがちな車いす利用者に「コロナが終息したら、ぜひ沖縄を楽しんでほしい。旅をしてほしい」とエールを送った。

 三代さんは18歳のとき、バイク事故で頸椎(けいつい)を損傷、肩から下半身にかけて障がいが残った。「もう明るい未来はないと思った」。静岡県のリハビリ施設で入院生活を送っていると、同じ障がいのある男性から「自分一人で電車に乗り、(東京の)実家に帰ってみろ」と発破をかけられた。「人に頼ることを当たり前と考えるようになっていた甘ったれの自分に、挑戦することの大切さを教えてくれた。まずは一人で何でもやってみようと考えるようになった」。三代さんは退院後、東京で一人暮らしを始め、23カ国42都市以上を回る世界一周の旅に出るなど、「車いすトラベラー」として活動するようになった。

 「例えばタイは(バリアフリーの)ハード面整備が全然駄目だった。でも困ったことはない。どこへ出掛けても、みんなが笑顔で車いすを押したり、持ち上げてくれた」。三代さんは旅と講演活動にも力を入れていたが、新型コロナ感染拡大でその両方が困難になった。

 「それなら以前から好きだった沖縄に生活拠点を移そうと考えた。コロナ後は沖縄観光を楽しみにしている人も多いはず。観光立県の沖縄で、車いすでも楽しめる場所を発掘したい」。移住から約2カ月。車いすでもスムーズに利用できる飲食店や、海水浴が楽しめるビーチなど、SNSは県民からも注目を集め出している。「車いす目線の情報発信を続けることで、沖縄の観光が車いす利用者にとってもっと魅力的に改善される可能性がある。より暮らしやすい、優しい環境になればうれしい」と話した。
 (嘉数陽)