7倍に成長した沖縄の県内総生産 でも県民所得は全国の7割台


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 沖縄の県内総生産は、日本に復帰した1972年度の6057億円から2017年度には4兆2664億円(いずれも実質)と、7倍以上に拡大している。復帰後に進められた道路や港湾などの社会インフラ整備を基盤に、好況と不況を繰り返しながら、基幹産業の観光業を中心に着実に成長を遂げてきた。しかし、いまだに1人当たり県民所得は全国平均の7割台にとどまり、格差は解消されていない。

 戦前の沖縄は、サトウキビ栽培など農業中心の経済構造だった。しかし沖縄戦で県民の4人に1人が犠牲となり、中南部を中心に県土は焦土と化した。戦後に沖縄を占領、統治したアメリカが、復興資材や生活用品などを輸入するために、政策的に為替レートを誘導したことによって、第3次産業中心の経済に移行した。

 復帰後の沖縄経済は、公共投資、観光収入、基地収入の「3K経済」と言われた。国内外からの観光客が増加し、2018年度は入域観光客数は1千万人を突破した。19年度の観光収入は7047億円となった。関連産業が多く、経済効果は幅広い業種に波及している。

 一方で、20年に発生した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により、人の行き来が激減したことから観光業を中心に多くの企業が深刻な打撃を受けた。第3次産業の比率が8割を超え、製造業の比率が少ないという産業構造の課題も改めて浮き彫りとなり、沖縄経済の先行きには不透明感が漂っている。