県営公園の計画が一転、駐屯地へ 県知事交代が潮目に<前宮古島市長収賄・陸自配備の闇>中


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宮古島市役所の家宅捜索に着手する県警の捜査員ら=13日午後5時30分、宮古島市平良

 宮古島市に衝撃が走った、前市長の下地敏彦容疑者(75)と千代田カントリークラブ(CC)の元社長(64)による、陸上自衛隊配備計画を巡る贈収賄事件。地元関係者らによると、下地容疑者が千代田CC周辺の土地売却に関心を持つようになったのは、県が宮古島への県営公園整備計画を進めていた2010年代にさかのぼる。

 当時市長だった下地容疑者は県営広域公園(宮古総合運動公園)誘致促進協議会の会長に就任し、11年には地元経済界とともに、県庁を訪れ利活用を要請している。その頃から、当時の千代田CC社長と交流し、千代田周辺の土地を県営公園の候補地として挙げるようになったという。

 潮目が変わったのは仲井真弘多県政から翁長雄志県政に代わった14年だった。保守系首長として、県政とのパイプが生かせないことを懸念した下地容疑者は、県営公園の誘致を困難視するようになった。15年1月には、防衛省や自衛隊関係者に千代田の利活用打診を重ねるなど、陸自配備計画へと方針を変えていった。

 地元関係者によると、千代田CCの元社長との接点になったのは敏彦氏が会長を務めた宮古地区自衛隊協力会だった。千代田社長を引き継いだ元社長は事務局長などを務め、親交を深めていったという。

 県警捜査2課は2020年中から内偵捜査を開始し、関係者の証言などを任意捜査で得ながら約650万円の金銭授受状況など調べを進めた。贈賄罪の公訴時効は3年で、千代田CCの元社長立件へのタイムリミットが迫る中、12日の強制捜査の着手に至った。

 一方で課題もあった。収賄罪は基本的に公務員の地位に伴い取り扱う職務にかかるため、国による千代田の土地購入に、宮古島市長である下地容疑者がどのように関与したかが焦点となった。

 那覇地検は県警捜査2課に対し、職務権限について精査するよう「宿題」(捜査関係者)を与えたという。県警は関係者の証言や証拠を精査し、地検との調整を重ねた。宮古島市長である下地容疑者の意向が、土地購入主体である防衛省の判断材料として影響を与えたことを確認。下地容疑者が16年6月の市議会で陸自配備計画の受け入れを答弁した行為を、市長としての職務行為と認定した。

 (当間詩朗、佐野真慈)