沖銀、琉銀、海銀決算とデータ比較 コロナ禍の対応、今後の見通しは<経済アングル>


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 県内地銀3行(琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行)の2021年3月期決算が出そろった。3行ともに減収減益となり、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が明確に現れた。県経済の先行きが不透明なことを念頭に、融資先の経営悪化に備えた与信コストが増大したことが共通する。「ウィズコロナ」「ポストコロナ」を見据え、県内企業の事業継続を支えながら、銀行経営の安定化を図るという難しい局面に立たされている。

 コロナの影響で収入が落ち込む企業の資金繰りを支えるための、実質無利子・無担保融資などの公的支援によって、銀行の資金貸し出しは増えた。21年3月期の県内地銀3行の総融資量は前期比3・9%増の3兆9824億8700万円となり、地域経済を下支えしている。

 一方、債権が回収できない場合に備える一般貸倒引当金繰入額も、3行で計24億7900万円の増加となった。コロナによる業績悪化でリスク管理債権は全国的に増加傾向にあり、県内地銀3行の与信コスト増額はこうした状況が背景にあるとみられる。

 

■姿勢

 沖縄銀行はコロナの経済影響が出始めた当初、自己資金の厚さで与信費用を吸収することは可能とするスタンスだった。だが、コロナ禍で被害の大きい業種などに12億1100万円の引当金を積んだ。

 沖縄海邦銀行も持ち前のきめ細かな対応で顧客の支援に当たっていたが、想定外の感染被害の深刻さを受け、1億800万円を積み上げている。

 前期に15億9100万円の引当金を繰り入れた琉球銀行は、21年3月期にはさらに27億5100万円を積み上げる対応をとり、将来のリスク拡大に備える。

 与信コストの増大は銀行収益を圧迫するが、日本銀行那覇支店の一上響支店長は14日の会見で「金融機関が貸し出すことで、倒産がはっきり増えているという状況にない。危機が表面化しているということはない」と、市中への資金供給に取り組む金融機関の姿勢を評価。その上で「信用コストを前倒しで積む動きが、金融機関の健全性の問題になる状況とは思っていない」として、各行のリスク管理の状況を分析した。

 

■見直し

 ただ、猶予期間を過ぎれば、事業者は返済能力を回復する必要性がある。

 コロナ禍という危機を乗り切るためとはいえ、業績が落ち込む中で事業者が借り入れを増やしたことによる、「過剰債務」という副作用も指摘されるようになってきた。県内企業の業績持ち直しの動きに弱さが続くようならば、中長期的に銀行の健全性にも影響が出てくる懸念がある。

 近年は日銀のマイナス金利政策や銀行間の競争で、金融機関の収益の柱である貸出金利息が低下してきた。県内地銀3行は貸し出しボリューム(量)を拡大することによって利ざやの縮小を補ってきたが、コロナを期にビジネスモデルの見直しも迫られてくる。

 「ウィズコロナ」も見据えて、取引企業の業態変更や事業再生を支援することをはじめ、事業承継、企業買収・合併など、融資以外にもさまざまなニーズに対応するサービスの高度化が一層求められそうだ。 (小波津智也)