「これで本当に終わりか」国策絡む事件の行方に中央政界も揺れる<前宮古島市長収賄・陸自配備の闇>下


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下地敏彦容疑者の逮捕の一報が流れた直後、記者団に囲まれる岸信夫防衛相(左)=12日、防衛省

 「これで本当に終わりなのか」。

 下地敏彦前宮古島市長(75)の逮捕の一報が流れた12日夕以降、県選出の国会議員らは口々にこう漏らした。下地容疑者に掛けられた嫌疑は、陸上自衛隊の配備に絡む収賄の疑い。防衛省が発注する事業に端を発する事件だったことから、「捜査当局の狙いは首長だけにとどまらないのでは」との疑念が広がった。

 宮古島市内で拡散していた情報が臆測の広がりに拍車を掛けていた。地元関係者によると、県警による下地容疑者らへの内偵情報は、4月ごろから関係各所へ漏れ出ていた。

 同月下旬には「5月の連休前に、下地前市長の身柄を取る」との未確認情報も出回っていたほか、県警以外の捜査当局の関与もうわさされていたという。

 1月の宮古島市長選で下地容疑者が落選して以降、県警が関係者の聴取を重ねるなど、捜査の動きは加速した。一方で4月に入ると、複数の地元関係者の間で「検事が現地入りしている」という話がささやかれるようになった。

 県警が捜査主体となっている汚職事件で、検事が捜査に直接関わるのは「異例」(捜査関係者)とされる。「宮古島入りしている」とされた検事の所属先についても、「那覇地検の検事だ」「県外の検察庁の検事のようだ」とさまざまな情報が飛び交い、膨らむ疑念は永田町にも波及した。

 地元事情に通じるある議員は、「今回の事件で複数の市政関係者が県警の聴取を受けていた。下地前市長が逮捕された12日以降も、検事から任意での聴取に応じるよう要請を受けている人もいる」と声を潜め、今後の捜査の行方に気をもむ様子を見せた。名前の挙がった市政関係者の一人は本紙の取材に対し、下地容疑者の逮捕以降に捜査機関から任意聴取を受けたことを認めた。

 事件は陸自駐屯地の配備先選定の過程で起きたが、加藤勝信官房長官、岸信夫防衛相ら関係閣僚はいずれも「選定過程に問題はない」との認識を示した。

 南西諸島の防衛強化という国策を背景にした事件は、このまま終局を迎えるのか。その答えが出るまでには、しばらくの時間が必要となる。

 (安里洋輔)