独ベルリン市内の駅構内に恩納出身・松崎清乃さんの作品 映像でコロナ禍問う


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
作品「Sisyphos+」の前で写真に納まる松崎清乃さん(左)と、パフォーマーのキム・ヴァルツさん=4月28日、ベルリンのフリードリッヒ・ストラーセ駅(本人提供)

 【恩納】恩納村出身で、ドイツのベルリン芸術大学修士課程で学ぶアーティスト松崎(まつさき)清乃(すがの)さん(29)の作品が、ベルリン市内の駅構内などで4月28日~5月3日の6日間、公開された。ギリシア神話で、無益な労働を繰り返すシジフォスの話からひらめいた「Sisyphos+」という映像作品。コロナ禍で生活様式が変わり、皆がよりよい生活を求める中、松崎さんは「繰り返しの日々から一歩先へ踏み出す力を願い、名付けた」と語る。

 作品はピンク色のエナジードリンクの広告をイメージしている。ドリンク表面ではパフォーマーのキム・ヴァルツさんが、仕事の生産性を上げるとされるヨガボールに座る。ボールは、シジフォスが山頂に押し上げることを繰り返した大岩を表す。生産性の最大化などを求める資本主義的な考えなどに、警鐘を鳴らす意味も込めているとした。

 展示は大学と広告企業が共同した授業の一環。新型コロナウイルス感染拡大で芸術に触れる機会が減る中で、街に芸術を取り戻そうという試み。選抜された学生11人の作品が、市内や主要駅フリードリッヒ・ストラーセの地下構内で公開された。

 松崎さんは恩納村安富祖で生まれ、普天間高、慶応大を卒業し、2015年にベルリンへ移住した。「言葉を介さず直接的で感覚的、抽象的に、今の時代に生きる人々の気分とメッセージを残せないか」と問い続け、現代美術にたどり着いた。芸術を歓迎し楽しむ基盤があるベルリンで挑戦を続けている。昨年は、東日本大震災後の宮城県石巻市を撮影した写真がドイツ環境省のコレクションに収蔵されたという。

 次の夢は「アーティストとして世界で活躍すること」。直近は、沖縄についての映画や映像の制作を目標にした。コロナ禍で約2年半も故郷に帰っていないが「今やりたいことを全力でやり、伝えたいことは恥じらいを捨てて相手に伝え、今この瞬間を一生懸命、一緒に生き抜こう」と沖縄へ向けメッセージを送った。 (金良孝矢)