いじられることもあったけど伸ばした「病気の人のために」 広がるヘアドネーション


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
米須絢都さん

 【豊見城】「男なの、女なの」「なんで長いの」。膝まで達した長い髪。引っ張られ、いじられ、からかわれることもあった。それでも伸ばし続けた。9日、糸満市西崎の美容室Ami―ca(アミーカ)で、豊見城市立伊良波小学校1年の米須絢都(けんと)さん(6)は生まれて初めて髪を切った。医療用ウィッグ(かつら)として髪を寄付する「ヘアドネーション」のためだ。

 きっかけは母の真澄さんが見たテレビ番組。米国で男の子がヘアドネーションのために髪を伸ばしているという内容だった。絢都さんも髪を伸ばした。

 周囲から「女の子」とからかいを受けることもあった。「男だし」と言い返し、いつしか「病気の人にあげる髪だよ」と自ら説明できるようになった。

 半年前から空手道場に通う。髪も十分に伸び、15日に大会を控えているため切る決意をした。

 初めてのはさみは真澄さんが入れた。どこか緊張した様子の真澄さんと絢都さん。続いて美容師が長い髪を次々に切った。膝まであった髪は肩甲骨あたりまで短くなった。ゴムで結んだ残りは、バリカンで刈り上げたスタイルに。

 絢都さんは照れくさそうに「いいんじゃん」と言った。真澄さんは「うれしい気持ちとさみしい気持ち」と絢都さんを優しく見つめた。切った髪は今後、ヘアドネーションの団体に寄付する。

 

「おしゃれしてほしい」 北谷・喜久村梨緒さん

喜久村梨緒さん

 【北谷】病気などで髪の毛を失った子どもたちに役立ててほしいと、北谷町立北玉小学校3年の喜久村梨緒さん(8)が4月17日、お尻まで伸ばした約40センチの髪の毛をカットした。さっぱりした髪の毛を触りながら「大事に使ってくれたらうれしい。おしゃれしてほしい」と笑った。

 同じサッカーチームの友達が病気で髪の毛を失ったことがきっかけだった。帽子をかぶってくる様子を見て「かつらにしてほしい」と伸ばし始めた。その後、友人は病気が完治し、髪の毛も生え始めたが、別の子のためにと、変わらず伸ばし続け、約2年間。お尻のところまで伸ばした。

 「最後の日は寂しかったけど、これまでで一番きれいに洗った」と話す。カットを担当した美容師にも驚かれるぐらいの毛量だったという。髪の毛はNPO法人「ジャパン・ヘア・ドネーション・アンド・チャリティー(JHD&C)」に寄付する。

 「短いのでシャンプーもドライヤーも楽しみ。でも、また伸ばそうかな」と2回目のヘアドネーションに意欲を見せた。