酒提供禁止「休業要請に等しい」「意味がない」飲食業界反発


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県の時短要請を受け休業している飲食店。シャッターの張り紙には、時短要請が延長されるたびに休業期間に取り消し線を引いて書き直している跡が見られる=那覇市泊

 新型コロナウイルス感染拡大が続いていることを受け、県は飲食店の酒類提供を終日禁止する措置も検討し、「まん延防止等重点措置」から「緊急事態宣言」に引き上げることで調整している。しかし、酒類提供禁止に対して、飲食関係団体から「休業要請に等しい。断固反対」といった反対の意見が上がっている。さらなる経済活動の制約にどこまで理解を得られるか正念場となる。

 那覇市泊の飲食店のシャッターには、休業期間を「~5月5日(水)」と記して紙を貼り出していたが、時短要請が延長されるたびに「11日(火)」「31日(月)」と書き直しをした跡がみられ、現場の混乱ぶりが浮かび上がる。

 店主の男性は「外を往来している人があまり減っていない感じがする。そうした状況で飲食店だけ時短や酒類提供を制限したところで意味がないのではないか」とつぶやいた。「感染防止対策が中途半端で、水際対策など力を入れる分野が他にあるのではないか」と、国や県の対応に不満を募らせている。

 那覇市東町の居酒屋も4月から休業を続け、食材や酒の仕入れを止めている。1年間据え置かれていた借入金の返済が今月から始まるといい、店主の男性は「協力金を借り入れの返済に回すが、先が見通せない。返済が怖い。協力金がない食材卸業や酒屋はもっと大変だ」と話した。

 飲食店の時短営業が続く中で、精肉の余剰傾向が続いている。県内のある業者は、飲食店などへの精肉の卸が減少し、本島中南部に確保した倉庫では間に合わず、別業者にも在庫を預かってもらっている。担当者は「インバウンド(訪日外国人客)の需要が大きかっただけに、コロナ以降は厳しい状況だ。緊急事態宣言が出ればこの状況がさらに続く」と嘆いた。

 17日の経済対策関係団体会議に出席した県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は、県が検討する酒類提供禁止について「現状で要請を無視している店が、酒類の提供自粛には応じるとは到底思えない。むしろ、今従っている店の中で行政の要請に応じない店舗が出てきてしまい、コントロールが利かなくなる恐れがある」と訴えた。

 16市町に対するまん延防止等重点措置で、午後8時までの営業時間短縮要請に「9割の店舗は応じている」と指摘した上で、「現状で要請に応じていない店に対する強い措置を優先すべきだ」と強調した。

 酒類業者らも懸念を示す。泡盛メーカーが加盟する県酒造組合の新垣真一専務理事は「酒類の提供自粛要請はメーカーへの影響も大きい。酒屋への販売が止まると売り上げもなくなる」と語った。

 オリオンビールの担当者は「出荷数量の減少は避けられないだろう。個人消費でカバーできるのかは疑問だ」と話した。