伝統菓子に先代の思い 那覇の歴史つなぎ133年 謝花きっぱん店<那覇市制100年 老舗企業、次世代へ>(上)


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琉球王朝伝統の銘菓「きっぱん」などの製造・販売を続ける謝花きっぱん店の謝花ひさの店主(左)と母の正子さん=17日、那覇市松尾

 20日で市制100周年を迎えた那覇市は、政治のみならず経済の中心地として、多くの企業が活発な商業活動を展開してきた。創業100年企業のバトンをつなぐ家族の物語から、伝統と革新が交差する那覇の歴史を2回に分けて紹介する。

 かつて琉球王朝への献上品だった「きっぱん(橘餅、桔餅)」などを製造販売する謝花きっぱん店(那覇市松尾)は、県内で唯一となったきっぱん製造店として、300年ほど前に中国から伝わったとされる製法を守り続けている。

 現店主の謝花ひさのさん(43)によると、同店は1888年ごろに創業した。戦争などで記録資料が焼失したため正確な時期は不明ながら、今年で創業約133年を迎える。

「謝花きっぱん店」の改修前の店舗=那覇市松尾(1987年より前に撮影、同店提供)

 1922年ごろ、ひさのさんの曽祖母の我喜屋カマドさん(故人)が、しゅうとめから家業のきっぱん、冬瓜漬の製法を受け継いだのが、文献でたどれる同店最初の歴史だ。カマドさんは息子と次女を戦争で亡くし、三女で、ひさのさんの祖母の謝花澄子さん(93)が沖縄が日本に復帰した72年に家業を引き継いだ。そして、96年ごろ息子の寛徹さん(72)にバトンタッチした。

 寛徹さん限りで店を閉じることも検討されたが、イギリスで就職していたひさのさんが「祖母が一生懸命に仕事をしている姿を見てきた。これからもプライドを持って、先代から通い続けるお客さんを大切にしていきたい」と、2010年に帰国して6代目として家業を継いだ。ひさのさんと英国人の夫で開発した「冬瓜漬アソート」は、14年の「第36回那覇の物産展」で最優秀賞に選ばれた。

 ひさのさんは「那覇は代々が生まれ育った場所で、市制100周年を共に迎えることを光栄に思う。これからも那覇に根ざし、琉球銘菓を継承していく」と思いを語った。
 (呉俐君)