【深掘り】那覇軍港の移設協議会、沖縄県が面積縮小を求めた背景とは


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那覇軍港移転先に浮上した浦添西海岸。奧の建物はパルコシティ、奧左はカーミージー橋

 米軍那覇港湾施設(軍港)の浦添移設に関し、約1年半ぶりに国と地元で話し合う移設協議会が19日、開かれた。防衛省は関係機関で方向性を確認したことで「一定の前進」と成果を強調する。計画を進めたい両市からは地元で事実上合意していた北側案について「正式合意になった」と、加速を期待する声が上がった。一方、県は代替施設の面積を小さくするよう正式に求めたが、防衛省は慎重な姿勢だ。県側もハードルの高さを認識しているが、要請したのは環境に配慮する姿勢を示す狙いがある。

 新たな埋め立てを伴う軍港の移設計画には反対の声が上がっている。玉城県政にとっては名護市辺野古の新基地建設との整合性も問われる悩みの種だ。県と両市が民間部分の形状案をまとめる際にも、環境保全や持続可能な開発の視点を強調して埋め立て面積を従来より33ヘクタール(約23%)縮小している。県はそれを踏まえて軍港も面積を小さくするよう求めた。

 防衛省担当者は協議会後の取材に「当然、環境には配慮する」と述べる一方で面積縮小について「確たることは申し上げられない」と語った。県によると、協議会の場で防衛省からは現行計画の方が近道だという説明もあった。

 代替施設は2013年に日米が合意した統合計画に約49ヘクタールと明記されている。浦添市担当者は「よほどのことがない限りいじらないだろう」と懐疑的に見ている。県幹部は「厳しいのは分かっている。だが伝えなければ、何も問題なく進んでしまう。県側の懸念は言っておかなければならない」と語った。

 面積縮小の要望が通る見込みが得られない中、移設反対の立場を取る県政与党から、反対に回るよう玉城デニー知事を説得する動きも表立って見られない。与党県議の一人は「世論を喚起していく」と述べるにとどめた。実際の完了までには長い時間を要するものの、このままでは県民議論が深まる前に、行政同士の協議のみで計画が進みかねない。
 (明真南斗)