【記者解説】沖縄の緊急宣言要請は2度目、追加指定の可能性は


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沖縄県庁

 大型連休後の新型コロナウイルスの感染急増に歯止めをかけようと、県が政府に対して緊急事態宣言地域に追加指定するよう要請した。東京都や大阪府など緊急事態宣言が発令された9都府県への宣言終了期限まで残り10日余となる中、県は「経済と医療」のはざまでぎりぎりの判断を下した。過去最多の新規感染者数を連日更新し、猛威を振るう「第4波」への対応が正念場を迎える。

 大型連休後の新型コロナウイルスの感染急増と医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を受け、県は「まん延防止等重点措置」に基づく飲食店などの酒類提供停止措置と、緊急事態宣言地域への追加要請を「二段構え」(県幹部)で検討してきたが、最終的に宣言地域への追加要請を選んだ。ただ政府は重点措置に基づく酒類提供停止措置や営業時間短縮要請に応じない店舗への措置命令を先に行うよう求めており、県の要請がかなうかは未知数だ。仮に指定されなかった場合は次に取り得る対策は少なく、医療崩壊に陥る恐れもある。

 感染拡大が続く中、過去2番目に多い新規感染者数160人が15日に確認され、県は16日から対策を検討し始めた。

 17日に開いた「経済対策関係団体会議」では、飲食業界が時短要請に応じていない店舗への対応を挙げ、酒類停止措置は「不公平」と猛反発した。県は来週にも時短に応じない店舗へ措置命令を出すが、遅きに失し、酒類提供停止措置は当面封じられた形だ。

 県は1月に政府に対して緊急事態宣言などへの指定を要請したが、かなわなかった苦い経験がある。県関係者によると、玉城デニー知事はここ数日、西村康稔経済再生担当相への連絡や面談で、宣言地域への追加指定の可能性を探った。だが西村氏からは色よい返事はもらえていない。

 だが、今回、政府から指定の確約が取れていない上でも、国の七つの判断指標のうち、4項目が緊急事態宣言を検討する「ステージ4」に達し、残りも高い水準にあることから要請に踏み切った。

 昨年4月以降の新型コロナの流行から1年余を経てもなお、制限が繰り返される。県は「医療と経済」のはざまで揺れ続け、思い切った対策を取りづらい状況だ。

 謝花喜一郎副知事は、大型連休前の県の対策について「その時取り得るメッセージは全て出した」と述べ、ベターな選択だったと強調した。ただ結果として緊急事態宣言の要請に至り、それが実るかも不透明な土俵際に追い込まれた。県はより真摯(しんし)に対策を検証する必要がある。
 (梅田正覚)