【深掘り】緊急事態、沖縄追加へ 見えない県の具体策に経済界が求めるものは


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県に支援金の増額などを要請する県卸売酒販組合の喜屋武善範会長(右端)、県酒造組合の佐久本学会長(右から2人目)ら=19日、県庁

 新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制が危機的状況に達する中、緊急事態宣言の発出が避けられない情勢となっている。休業要請といったより強い措置がとられることで、景気は一層停滞すると予想される。県は事業者への支援を計画するが、具体案を提示できておらず、県内経済界からは直接給付など具体策の提示を求める声が上がっている。全国では、支援策の拡充に取り組む都道府県も見られる。

 ■「1年前から」

 基幹産業の観光業は、コロナ禍で深刻な打撃を受けている。県はこれまで、県内観光の旅費を助成するキャンペーンなど、約14億円の予算を投じて需要喚起策を実施してきた。ただ、感染拡大が止まらない現状では事業の再開は難しく、観光業界からは直接支援を求める声が強まっている。

 北海道は2020年度、予算額約78億円を計上して観光事業者への支援策を実施。衛生機器や防護シートの導入といった感染対策費用の補助など、幅広い支援を展開した。京都府でも、修学旅行の密対策として、バスの使用台数を増やす際の費用支援などを実施している。

 県内観光関連企業の経営者は「県の支援策の具体性が全然見えてこない。直接給付の支援が必要だと、1年前から言っている」と話し、対応の遅れを批判した。

 ■給食に県産品

 県は緊急事態宣言を出した場合の農林水産業に関する支援策について「未定」とするが、当面は21年度当初予算で実施している給食への県産農水産物の利用や、航空便減に伴う臨時便運行の支援などを続ける。

 給食への利用促進はサツマイモやトウガン、マグロ、車エビ、あぐー豚などが対象で給食使用時の購入費を補助する。観光需要減などへの対応で、あぐー豚は6~9月で10トンの利用を見込む。

 ■地方創生交付金

 緊急事態宣言が発出されると、酒類を提供する飲食店などに休業要請が出される。酒類の卸売業や製造業にとっては死活問題となる。

 国は売り上げが半減した事業者に対し、月20万円を上限に「月次支援金」を支給するとしているが、卸売事業者からは「この金額では到底足りない」「3~4割も売り上げが落ち込んでいても活用できず、ハードルが高い」などと指摘する声が上がっている。県酒造組合と県卸売酒販組合は19日、県に対して支援金の増額や支給要件の緩和などを要請した。

 国税庁は4月30日、都道府県に対して事務連絡を通知し、地方創生臨時交付金の活用事例を掲示。広島県と高知県が納入事業者に対して、国の月次支援金に金額を上乗せし、支給要件を緩和していることなどを紹介し、困窮する酒類販売業者などへの積極的な支援の検討を求めた。

 県酒造組合の新垣真一専務理事は「緊急事態宣言が出れば酒の消費は一層落ち込むだろう。卸やメーカーにも、支援金を拡充してほしい」と訴え、支援の必要性を強調した。

(小波津智也)