細田氏「沖縄らしくない」発言に批判続々 自民も困惑 玉城知事は…


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沖縄振興調査会で持論を展開する自民党の細田博之元官房長官(左)と、玉城デニー知事(中央)、小渕優子調査会長(右)=19日、東京

 【東京】「国の政策に頼るなんて沖縄県民らしくない」―。19日の自民党沖縄振興調査会での細田博之元官房長官の発言が、国政に波紋を広げている。新型コロナウイルス感染症対策の県の対策に苦言を呈したものだが、野党から「沖縄差別だ」と批判が集中。一方で、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言などの政府の政策にも「効果がない」と断言している点は、自民党内にも困惑を広げている。新たな沖縄振興計画(沖振計)を話し合う場での玉城デニー知事を突き放すような発言は、基地問題で対立する政府と県との溝の深さも浮き彫りにした。

■広がる反発

 「沖縄を蔑視した発言で看過できない」。立憲民主党の安住淳国対委員長は20日の党代議士会で、細田氏の発言を批判した。

 「コロナ対策を主導するのは政府だ。与党の重鎮としてあまりに無責任な発言だ」(立民・屋良朝博氏)、「『公衆衛生の向上および増進』は、憲法25条に定められた国の責務だ。政権与党としての責任を放棄しており、公職を辞するべきだ」(共産・赤嶺政賢氏)など、県選出の国政野党議員も一斉に反発した。

 一方、与党内からも「(細田氏が)周囲に常々語っていた持論だが、場をわきまえてほしかった」(県選出議員)、「国の政策が全くだめという話しぶりだった。そこはまた違うと思うんだけど…」(中堅議員)とため息が漏れる。

■集中砲火

 19日の沖縄振興調査会で問題発言をした細田氏の隣には、玉城知事の姿があった。本年度末で期限切れを迎える沖縄振興計画に替わる新計画の要請で、東京の自民党本部を訪れていた。

 発言の最中はマスク越しに厳しい表情をのぞかせていた玉城知事だが、非公開での会合中にも、出席した自民党議員からの“集中砲火”にさらされた。

 会合では、既に県が発表している新たな沖振計の「骨子案」とは別の資料も示されたが、「課題に対する深掘りが全く出てきていない、ひどい資料だ」(県選出議員)と酷評が相次いだ。調査会幹部は「要請には『新たな沖縄振興特別措置法を』とあったが、文言を換えただけで中身は実質、単純延長と同義だ」とあきれる。

 調査会の小渕優子会長からは「ここで見直しをするというのは、もう何年も前から決まっていたことだ。降ってわいたような話ではない」と県側の準備不足に苦言が呈された。

 県政野党のある県議は、「細田氏の言うことも一理ある。玉城県政のコロナ対策は、離島県の利点を生かし切れていない」と指摘し、こう続ける。「沖振計にしろコロナ対策にしろ、玉城知事の熱意が全く伝わってこない。細田氏の言葉は、政府与党内のそうしたいら立ちを象徴していたようにも思う」

 細田氏の発言をめぐる騒動は、与党内で広がる沖縄への冷ややかな視線と共に、玉城県政の課題をもあぶり出していた。
 (安里洋輔)