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人生を決めた鍼灸との出会い、痛みや悩み真摯に 池村昌彦さん<県人ネットワーク>


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整体、東洋医学を追求し、独自の施術で定評のある池村昌彦さん=21日、東京

 東京都千代田区の神田駅周辺は、疲労をため込んだビジネスマンが激しく往来する。そのせいか、街にはその疲労を癒やすマッサージ店や整体などの店舗が点在する。まさに激戦区の様相を呈する街に池村昌彦さん(37)は分け入って整体院を経営している。「ラクなる東洋整体」の代表として2018年に整体院を開設した。

 整体の道を志したのは、高校時代にさかのぼる。野球部での打撃練習で腰に痛みを感じた。病院に行くと「異常なし」と、実感とはほど遠い診断だった。そこで紹介された鍼灸(しんきゅう)院に赴くと人生の進路を決める出会いがあった。「ものすごく丁寧な先生だった」と振り返る。その師を通して痛みや悩みに真摯(しんし)に向き合い、解決へ導く東洋医学・整体術に魅せられた。

 以来、神田の整体院開設までには深夜の工事現場、季節労働にも従事した。それも「心身の鍛錬、修行と捉えた」。さらに同業他店でも働いて、今に至る基礎体力を養った。

 東京での生活も6年になった。前半期には東洋医学の本場・中国で出張整体の仕事をした時期もある。東京での暮らしは「いい意味で仕事にこだわり、それを結果で見せる。そんな風に頑張っている職人さんが多いと実感する」という。

 取材で訪ねた今月21日。「結果で見せる仕事」を地で行く施術が披露された。両肩の鈍痛がすっきり取り除かれたと実感を伝えると「その反応のためにこの仕事をしている。うれしいですね」と頬を緩めた。

 神田の県人を含め、多彩な人との出会いに恵まれ、整体院は安定的な評価を得ている。プロ野球選手が訪れるまでになった。コロナ禍にあってもビジネスチャンスが多い東京という地の利を生かせるのも、何事も前向きに転換する気質ゆえだ。周囲の頑張りが自身の発奮にもつながり東京ライフは「最高に楽しいですね」と話す。

 独自の整体術で東京に挑んだ沖縄発ベンチャーの池村さん。「飛び込んで頑張っていればどうにかなる。それを見ている人が助けてくれる。そういう街ですね。動かない人たちに限って文句ばかり言いますね」と笑顔で話す。「まずは勇気を持って興味のある新しい世界に飛び込む。もうだめだ、という時に必ずヒントがある」。同郷の後進たちにエールを送る。


 いけむら・よしひこ 1983年6月生まれ。那覇市天久出身。浦添高校卒業後、沖縄大学中途退学。愛知県で季節労働などを体験。「カッピング」(吸い玉)療法を提供するなどオリジナルな整体院「ラクなーる神田」を、2018年に東京・内神田に開設した。