「地元に不義理できない」…負債拡大前に廃業決断 うるまの宴会場「ニュー三和」


「地元に不義理できない」…負債拡大前に廃業決断 うるまの宴会場「ニュー三和」
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 新型コロナウイルス感染拡大が収まらない中で、うるま市で3月、老舗の結婚式場・宴会場が廃業した。市田場の「ニュー三和」は30年以上にわたって、結婚披露宴や生年祝い、同窓会など地元の人たちの節目を刻むライフイベントで利用されてきた。しかし、コロナ禍で急激な需要減に直面し、返済しきれない負債を抱えてしまう前に幕引きを決めた。「(未払い債務を残す倒産で)地元の人たちや従業員に不義理はできない」とする、仲村靖代表なりのけじめだった。

 ニュー三和は1989年に開館した。98年に仲村代表が創業企業から事業譲渡を受けて、運営会社を設立した。結婚式・披露宴のほか、生年祝いや各種会合、コンサート、芸能関係イベントの会場となってきた。年商は約2億円。コロナの影響が出始める直前の2020年3月期決算まで黒字経営を続けていた。

ニュー三和の代表を務めていた仲村靖氏

 だが、県内でも感染者が出始めた昨年3月以降、冠婚葬祭やイベントは一気に自粛モードに入る。ニュー三和でも会合や歓送迎会などの予約は7~8割がキャンセルされ、宴会事業の休止に追い込まれた。仲村代表は「人が集まる行事が主力だったが、ありとあらゆるものが中止された」と振り返る。

 国や県、市の支援制度なども模索したが、収入がない中で、施設の維持管理費が重くのしかかった。

 「収束後も需要はすぐに戻らない。今まで通りの経営は難しい。地域の思い出の場所が『倒産』という形にはしたくなかった」。昨年12月、仲村代表は営業休止を決断した。土地と建物は赤峰家具(うるま市)に売却。その収益で債務を清算して従業員への手当を払い、今年3月31日付で会社を解散した。約20人いた従業員の大半は退職したが、一部はグループ企業で雇用した。

 多くの市民から「結婚式で使った」「同窓会で使った」と声を掛けられてきた。休業中も再開を待ち望む問い合わせが相次ぎ、会社解散が報じられると残念がる声が寄せられた。

 仲村代表は「地域の人たちに助けてもらってここまで来られた。最後まで会社を支えてくれた従業員にも感謝でいっぱいだ」と語った。

(塚崎昇平)