脳卒中の体験、思いを共有 当事者5人が語り合う 未来につなぐ会in沖縄


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脳卒中を経験した当事者らが語り合う「未来につなぐ会in沖縄」の第1回の参加者ら(島袋みちるさん提供)

 脳卒中の当事者が語り合う「未来につなぐ会in沖縄」の第1回が8日、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で開かれた。県内在住の理学療法士の島袋みちるさんが企画し、円滑な進行を支援するファシリテートを務めた。脳卒中当事者5人が、それぞれ普段の生活で感じていることなどを語り、思いを共有した。
 (中村万里子)

 「未来につなぐ会」は、脳卒中を体験した人同士が対等な立場で話を聞き合う「ピアカウンセリング」の手法を取り入れる。ファシリテートは医療従事者が務める、というのが特徴だ。同会は全国16カ所で開かれているが、沖縄では初めて。島袋さんは、脳卒中の患者と接する中で、多くの患者がふさぎ込む様子を見て、「当事者間で語り合う場をつくりたい」と考えた。理学療法士になって12年目。8年目の時、自身が担当した脳出血を発症した患者が自死を考えるまで精神的に追い詰められてしまった経験から、患者には身体的なケアだけではなく、精神的な支援が必要だと考えるようになったという。

 8日の「未来につなぐ会in沖縄」には40~70代の脳卒中を経験した5人の当事者のほか医療関係者が参加した。県内から2人に加え、東京、埼玉、北海道から3人が加わった。5人は、島袋さんのファシリテートで、まずは「この1週間で良かったこと、うれしかったこと、新しく発見したこと」をそれぞれ話した。豊見城市から参加した男性が「出会える場が沖縄にあるかずっと探していた。きょう出会えたことがうれしい」と話すと場が和んだ。

「未来につなぐ会in沖縄」を主催した島袋みちるさん(本人提供)

 続いて「ありがとう」をテーマに、人生で一番感謝したい人やきっかけとなったエピソードを紹介。約1年前に脳出血で倒れた大工の男性が「退院した当初は外に出られるか不安で、木工所を閉めた方がいいんじゃないかと迷った」と明かした。男性は左半身にまひが残っており、重いものを持ち上げることが難しいといい、「バランスを崩しそうな時にはスタッフが支えてくれる。症状を理解して自分の仕事をサポートしてくれるスタッフに感謝したい」と話した。

 埼玉県の介護士の女性はリハビリをしながら仕事に励んでいるという。職場で、脳出血で倒れた際、同僚たちの迅速な対応のおかげで早く治療を受けられ、回復も早かったと振り返った。さらに同僚たちは、病院に家族を連れてきてくれたり、見舞いやリハビリを応援してくれたりするなど「兄弟でも、ここまでしない」と話し、手厚い支援に感謝の言葉を述べた。

 脳出血と脳梗塞を患った女性は、2年前に亡くなった夫や自立を促してくれた息子への感謝を口にした上で「心が小さくなったら駄目。自分を障がい者ではなく、不自由をもらったと思っている。病気だからできないでいい。でも、自分がほしいものは自分で獲得するくらいの気持ちを持つことが大事」と話した。

 次回の「未来につなぐ会in沖縄」は同様にZoomで8月か9月に開催を予定している。定員は5~6人程度。参加費は初回は無料で2回目からは1100円。新型コロナウイルスの状況を見て、対面でも実施したいとしている。ファシリテート側の医療従事者の協力も呼び掛けている。問い合わせは島袋さんmichi.selfish@gmail.com