【深掘り】サツマイモの輸出が9割も減った理由 那覇空港国際物流ハブ運休から1年


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那覇空港から県外空港を経由して海外輸出され、到着までに傷んだゴーヤー=2020年4月30日(輸送業者提供)

 全日本空輸(ANA)が那覇空港を拠点に実施していた国際物流ハブ事業が、新型コロナウイルスの影響で2020年4月に全便運休となってから、1年以上が経過した。日持ちがしない生鮮食品の輸出量が落ち込んでいる。再開のめどが立たない中で、輸出業者らは「直行便を早く戻してもらいたい」と強く望んだ。

 損失1億円

 県の航空コンテナスペース確保事業で20年度に取り扱った貨物量は、前年度比25・8%減の1056トンとなった。直航便がなくなったことで輸送時間が長くなり、青果物など日持ちしない食品の輸出などが落ち込んだ。

 中でも、植物防疫法の規制で国内出荷が難しい未加工サツマイモ類の輸出量は激減した。県内にはアリモドキゾウムシなどの害虫が生息しているため、他都道府県に持ち出すことは規制されている。一方、海外への輸出は相手国の規制に適合すれば可能だ。

 貿易統計によると、沖縄地区税関経由のサツマイモの輸出量は19年度の210トンから20年度には10トンと、約96%減少した。金額ベースでは19年度の1億229万円から20年度は301万円と、約97%減少した。

 生鮮食品を香港などへ輸出する業者は、県内に拠点を設け、県産を含む国産サツマイモを年間約20トン近く輸出してきたが、国際物流ハブの停止によって20年4月以降は沖縄からの輸出ができていない。香港では数年前から日本産サツマイモの人気が高まっていて、業者は需要に応えるため、県外空港から香港に輸送するルートに切り替えた。輸送費は約4倍になった。担当者は「沖縄で事業を拡大していく予定だったが、直行便がなくなって困っている」と戸惑った。「那覇空港から(台北経由など)南へ下るルートがあれば出荷がスムーズになる。県には物流ルートの構築を期待したい」と望んだ。

 新モデル進展せず

 沖縄から鮮魚や精肉を香港や台湾などに輸出する生鮮品業者は「月に約30~40トンの注文があるが、機材縮小で毎月10トンしか出せない。金額ベースでは約8千万円から1億円の損失だ」と悲鳴を上げた。ゴーヤーなど生鮮食品が、到着までに傷む例も発生している。「これまでは海外の目的地でも搬出の翌日に到着していたが、翌々日の到着となった。温度管理などの問題も重なり、これまで何回も生鮮食品の破損事例が生じた」と述べた。

 県とANAは1月、那覇空港に就航する航空会社の旅客便貨物スペースを活用して国際貨物の輸送を担う新たなモデルを発表した。だが、新型コロナ感染拡大の影響で、国際便再開の見通しが立たず、計画通りに進んでいない。県は「外国航空会社などを活用しての輸送モデルに進展がない。引き続き、航空会社と情報交換していきたい」と述べるにとどめた。航空貨物事業を担うANAカーゴの担当者は、那覇発着便再開への需要はあるとして「格安航空会社なども利用し、小口の貨物輸送にも取り組んでいきたい」と語った。 (呉俐君、塚崎昇平)