新型コロナウイルスの影響により活発化した電子商取引(EC)などの需要増を背景に、業績を伸ばす宅配便事業の沖縄ヤマト運輸。春の定期採用では過去最多の計57人を採用し、接客担当社員を対象に新たな職位「ゲストアテンダント(GA)」制度を導入した。同社の赤嶺真一社長に、人材育成などについて聞いた。
―昨年は宅配便が好調に推移した。
「昨年4月は観光客が減り、企業の活動も停滞したことで配送個数が前年を下回った。しかし、産業のEC化の需要をつかんでいたので、違う業態からECに参入したい顧客と契約することで市場の開拓が進み、5月以降は大きな伸びを見せた。2021年3月期決算では、大幅な増収増益となった」
―どのように業務効率化を図ったか。
「いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。具体的にはソフトウエアのロボットで作業の自動化を図るRPAや、文字などをデジタルデータ化する技術のOCRを採用した。プロセスを見直し、業務を合計で1万時間ほど短縮させることができた」
―人材育成に取り組んでいる。
「コロナの影響で、オンデマンド方式の研修が充実し、沖縄でも受講することが容易になった。役職に応じたきめ細かい研修は、人材育成に力を入れるわれわれにとって非常に有益だ。社内の雰囲気も前向きで良くなっている」
―GA制度導入の意図は。
「サービス接遇検定や運行管理者試験の合格などを通じて社員のスキルを高め、顧客接点の強化とキャリアパス(昇進への道筋)の明確化、正規雇用化を目指している。今月認定を受けた契約社員16人を、正社員に登用している」
「お客さまにより質の高いサービスを提供することができれば、競争力向上につながる。キャリアパスを明確化することで、研修を通して社員のマインドやスキルが高まる。特に沖縄では、女性の非正規雇用が多い。女性がもっと活躍できる会社にするために、短時間のパート社員でも、志があればチャンスがあることを示したい」
―中途採用にも力を入れている。
「セールスドライバーは春と秋、事務職や総合職は春に募集している。もちろん正規雇用だ。さまざまな経験を積んだ人が集まり、自ら挑戦し、成長を実感できるような企業にしていきたい。われわれの生命線はラストワンマイルと呼ばれるセールスドライバーやGAなど顧客接点だ。彼らがもっとお客さまに向き合えるような企業にしていきたい」
(聞き手 小波津智也)