基地周辺土地規制法案 対象区域があやふや 「阻害行為」の定義も政府に一任


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 【東京】土地規制法案は衆院内閣委員会を中心に質疑を重ねた。法案の必要性は「安全保障上のリスクに対応する必要がある」とする一方、政府側から過去の具体的な事例は示されず、規制対象の行為もあいまい。野党からは「質問1問ごとに闇が深まる」(赤嶺政賢氏)との声が上がる。

 そもそも、市民に直接影響が及ぶ対象区域があやふやだ。政府は27日、指定される可能性がある場所として有人国境離島・地域離島148島(うち県内50島)、海上保安庁174施設(うち県内8施設)のリストを内閣委に提示した。

 一方、防衛省は自衛隊施設の候補を示すことは「自衛隊の能力を容易に推察することが可能になる」として断った。米軍施設の調整もこれからで、沖縄の負担が増える可能性が高い。

 審議で焦点となったのは、規制対象となる施設の「機能を阻害する行為」の具体例だ。政府は国内外の情勢などによって変わるとして法案での例示は「適当でない」と説明。閣議決定する基本方針で例示する方針だ。規制対象の行為を政府に白紙委任することを意味し、懸念が相次いだ。

 法案では不動産登記簿、住民基本台帳などを基に所有者の氏名や住所、国籍などを調べる。だが、土地を悪用する可能性を公簿類から絞り込むのは難しい。政府は思想調査を否定する一方、調べた情報を公安調査庁などの情報機関に提供することは「あり得る」として実施する考えだ。防衛施設周辺の現地現況調査は防衛局が行う見通しだ。個人情報を防衛局職員が扱うことに疑問の声が相次いだ。防衛省は調査に情報保全隊は関与しない方針を示した。

 平和運動への影響の懸念も根強い。内閣官房は道路のような所有も賃借もしていない土地で座り込みを行う場合「勧告・命令の対象とはならない」とするが、与党内から適用を求める声もある。規制対象となる行為は閣議決定で変えられるため、懸念は晴れない。


県選出・出身国会議員コメント
 

思想の自由侵す 赤嶺政賢衆院議員(共産)

 すべてを政府に白紙委任し、思想・信条の自由を侵す違憲立法だ。基地被害に苦しむ県民を監視・処罰の対象にするもので、絶対に容認できない。廃案に向け全力を尽くす。

恣意的運用危惧 照屋寛徳衆院議員(社民)

 安全保障を名目に私権を制限し、住民を監視せんとする人権侵害法案。立法事実もなければ「機能阻害行為」の定義もあいまいで政府の恣意(しい)的運用が危惧される。廃案を求める。

刑罰対象 無制限 屋良朝博衆院議員(立民)

 極めてあいまいで問題の多い憲法違反の法案。風でゴミが米軍基地へ飛んだだけで機能阻害行為との見方を一部自民議員が示したように刑罰の対象範囲が無制限に広がる可能性がある。

基本的には賛成 西銘恒三郎衆院議員(自民)

 基本的には賛成の立場だ。ただ、まだ衆院本会議での採決が残っている。法案について、まだ詳しく話をする段階ではない。

人権に万全配慮 国場幸之助衆院議員(自民)

 国境離島や重要施設周辺の安全な土地売買の透明性を保つことが必要で、沖縄周辺の情勢が緊迫している今だからこそ、整備が求められる。個人情報や人権にも万全の配慮をする。

住民不安解消に 宮崎政久衆院議員(自民)

 安全保障の脅威となる不透明な土地利用に一定のルールをかけ、必要な調査をすることは重要施設周辺の住民の不安解消につながる。通常の土地利用を制約するものではない。

運用に慎重さを 下地幹郎衆院議員(無所属)

 地主・周辺住民の理解を得ながら、安全保障を維持し、経済活動を阻害しない。それらをすべて備える法案の制定は並大抵の作業ではなく、運用にも慎重さが求められる。

県民挙げて反対 伊波洋一参院議員(沖縄の風)

 法案に反対だ。沖縄の米軍施設・自衛隊施設等の周囲1キロ幅と全有人離島を政府が監視できるようにするものだ。「台湾有事」等の戦時に備えるもので県民挙げて反対しよう。

人権侵害の立法 高良鉄美参院議員(沖縄の風)

 外国人の土地取得を理由としながら、基地周辺住民を対象として無限定な情報収集がされる恐れがある法案。機能阻害行為の範囲も不明確で、人権侵害の違憲立法だ。