新基地関連の政府有識者「ジュゴン絶滅」論文 防衛省は「個人の研究活動」と評価避ける


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環境省の職員ら(右側)と交渉するジュゴン保護キャンペーンセンターのメンバーら=28日、東京

 【東京】沖縄のジュゴンが「2019年に絶滅した」とする論文を、名護市辺野古の新基地建設で環境対策を助言する防衛省有識者会議の一部委員が英科学誌に投稿したことについて、防衛省は28日、論文について「研究者個人の研究活動で、防衛省として答える立場にない」と内容の妥当性について評価を避けた。環境省が07年に絶滅危惧種リスト(レッドリスト)に入れた点に触れ、「環境省がそのように指定したものと承知している」とだけ述べた。

 環境省は同日、大浦湾など県内海域に生息するとされるジュゴンについて絶滅危惧種とし、今後も調査を継続する方針を示した。防衛省有識者会議の一部委員による論文については、「査読中ということもあり、今の段階では評価できない」と述べるにとどめた。

 両省ともジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)との政府交渉で明らかにした。

 SDCCは防衛省に、20年2月から工事現場海域の水中で録音された、ジュゴンの鳴音らしき音のデータ公開などを求める3万2千筆分の署名も提出した。

 環境省の担当者は、「食(は)み跡(餌の海草を食べた跡)や目撃情報が複数確認されている」と説明。20年度に実施した生息調査で本島北部の古宇利島や、西表島周辺など複数海域で食み跡を確認した点を挙げた。