「格差広がりを懸念」「早急に実態把握を」 識者の見方は<沖縄県未就学児調査>


社会
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格差広がりを懸念 島村聡教授(沖縄大学)

 今回の結果では認可保育施設の認可化や医療費の窓口無料化などで子育て環境が改善するなど一定の成果が見られた。低所得層は父親でも正規職が少なく、長時間労働を強いられている一方、産育休などの利用は低い。労働環境の改善が低所得層には届いていない。

 さらにコロナ禍では低所得世帯ほど、また2人親世帯よりひとり親世帯で収入の減少幅が大きく、格差の広がりが懸念される。医療機関の受診を控えた親は全体的に増え、低所得層ではランドセルの購入費用への不安も増えた。コロナ禍が生活の随所に影響していることがうかがえる。

 コロナ禍での収入減少が大きい世帯ほど子育ての孤独感は高くなった。慢性的な疲労感は虐待の発生に関連する可能性がある。コロナ禍は調査時以降も続いており、長期化の影響が懸念される。

 公共料金の滞納経験は減っており、給付金や貸し付けが奏功しているとみられる。しかし低所得層ほど制度利用への抵抗感や情報不足がある。不安に寄り添い、制度を利用できるよう支援者側から出向いていく必要がある。

 (社会福祉)


早急に実態把握を 阿部彩教授(東京都立大学)

 今回の沖縄子ども調査は、コロナ禍による世帯の経済状況の変化も調べており、新型コロナの子どもへの影響を分析することが可能な貴重なデータである。

 世帯収入で見ると、全体の約6割は「変化なし」で、すべての子育て世帯で収入が減少したわけではない。しかし低所得層I、ひとり親世帯では「5割以上減った」「まったくなくなった」が1割を超えている。

 本調査が実施されたのは2020年秋であり、2回目、3回目の緊急事態宣言の前である。現在はコロナ禍が始まって1年以上たっており、一時金や貯蓄も枯渇していると考えられる。早急な支援が必要だ。

 前回の17年調査と比較すると、滞納経験が減少し、保育所などの利用状況が改善するなど、県および基礎自治体の対策の成果が表れていると考えられる。一方で、状況が改善している層と、コロナの影響を踏まえて状況が急速に悪化している層の明暗が激しくなっている。調査データを詳細に分析し、厳しい層を明確に把握していく必要がある。

 (貧困・格差論)