【識者談話】米軍ヘリ不時着「騒音規制の例外悪用」山本章子・琉大准教授


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 深夜に米軍ヘリコプターが津堅島へ不時着したことで、午後10時から翌午前6時までの飛行を控えるよう定めている騒音規制措置が有名無実化している実態が改めて明らかになった。「運用上の所要のために必要と考えられる」場合には午後10時を超えて飛行できることになっており、米軍がそう主張すれば認められてしまう。この例外規定が悪用されている。

 米軍がたびたび民間地に着陸したり、現場を封鎖したりするのは、日米地位協定以上に米軍の特権を認めた合意議事録があるためだ。地位協定本文の3条は基地内の管理権を認めているが、合意議事録では基地外にまでその権限が拡大されている。米軍提供施設・区域だけでなく「その近傍」でも航空機の離着陸や現場の封鎖を認めている。

 合意議事録の存在について、日本政府は2004年の沖縄国際大米軍ヘリ墜落事故後まで表立って知らせてこなかった。政治的な議論を経ておらず、合意議事録が認めている「近傍」の範囲が定義されていない。その結果、米軍にとって都合のいい運用がまかり通っている。米軍としては「沖縄全体が米軍基地の近傍だ」と解釈しているのだろう。

 不時着したUH1Yヘリの離着陸回数は近年、増えている。離島などを占拠して攻撃や補給の臨時拠点にする、海兵隊が試行中の「遠征前方基地作戦(EABO)」を念頭に、攻撃機能のあるヘリとして重宝されていると考えられる。