ヘリ不時着「予防着陸」の詳細は?米軍説明なし 民家近くの理由も不明


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橋本尚文外務省沖縄担当大使(左)と田中利則沖縄防衛局長(手前)を呼び出し、米軍ヘリ不時着事故について抗議する謝花喜一郎副知事=8日午後、県庁

 うるま市の津堅島に米軍普天間飛行場所属のUH1Y多用途ヘリが不時着した事故から9日で1週間。米軍や沖縄防衛局からは、原因について「飛行中に警告灯が点灯したため」という以上の説明はない。同型機の飛行は続き、県は「訓練空域・水域の返還」の言及にも踏み込んだ強い抗議を示した。一歩間違えれば大惨事につながりかねないという県や地元の懸念に対し、米軍は安全のための「予防着陸」との説明を繰り返し、認識の差が改めて際立った。

 8日、津堅島を訪問して地元住民らに謝罪した在沖米海兵隊のニール・オーウェンズ大佐は「計器の一つにランプが点灯し、十分に安全を確保できる状態で機体と乗組員の安全のために着陸した」と説明した。米軍が事故当初から説明している内容と変わらない。

 同日の県の抗議の場で、田中利則沖縄防衛局長も謝花喜一郎副知事に同様の報告をした。

 本紙は8日、海兵隊に不時着機の修理箇所を問い合わせたが「作戦保全のため、航空機の特定の部分については言及しない」と回答。うるま署は米側の説明として「エンジン故障」とした。関係者によると飛行中に異音が聞こえ、警告灯が点滅したという。

 航空評論家の青木謙知氏は米軍や自衛隊などの不時着時の対応として「墜落や民間に被害が出た場合などを除き、軍事機密も関わるとして情報発表は限定的な傾向にある」と解説した。

 普天間飛行場配備の同型機は2日の事故以降も訓練を中止せず、飛行を続けている。謝花副知事は田中局長らに原因究明とそれまでの同機種飛行停止などを要望。飛行ルートが不透明なことなどを指摘し、「訓練のあり方に点検が必要だ。そうしなければ同じことがまた起きる」と訴えた。

 米軍が「予防着陸」という表現を使っていることについても疑問を呈し、「事故ではなく、事故を事前に防ぐ対応ということだが、不時着現場は民家から約120メートルの距離だった。県民と認識に違いがある」と訴えた。