文化財級も!「沖縄の宝」5万点、私費で集めて50年 諸見民芸館が記念展を準備


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ぎっしり詰まった館内で開館50年目を振り返る伊禮吉信館長=3日、沖縄市の諸見民芸館

 【沖縄】沖縄一の収蔵数5万点余を誇る沖縄市諸見里の諸見民芸館(伊禮吉信館長=※正確には「禮」の文字左側は「礻」)=市諸見里=が今年で開館50年目を迎えた。専門家は文化財級の貴重、希少で多彩な収集品に「沖縄の宝」と評価する。伊禮館長は「沖縄の心を伝える生活文化遺産です」と記念展の準備に精力を傾けている。

 私財を投じた同民芸館は、伊禮館長の父憲一さん=当時43歳=が、沖縄の日本復帰前となる1971年10月に開設した。当時は県立博物館のみがあっただけで、私設博物館は話題を呼んだ。本紙のほか月刊誌オキナワグラフでは見開き特集を組むなど報じ、開館4周年には総合雑誌「文化評論」でも紹介された。

 建物は床面積約200平方メートルの3階建て。開館式典で当時の大山朝常沖縄市長は「コザ市の宝、否、沖縄の宝であり、観光資源としても期待する」祝辞を述べた。

 伊禮館長は「父は若い頃から古来の生活史や文化に興味を持ち、遺物を収集していた。いつの間にか家の中は足の踏み場もないほど。生活様式は確実に変わっていくのでその遺品、資料を後世に残したい。私財をなげうっての民芸館はその執念だった」と父の思いを述懐した。

 館内には古陶器、古銭、三線、戦争遺品、農漁業の生産用具、生活用品、民具類のほか関連の考古資料などがぎっしりだ。88年父から引き継いだ伊禮館長は「父と共に離島を含め県内はほとんどくまなく回った。情報があれば飛んでいった。4歳下の弟の吉正も手伝った」という。

 逸品の一つに、本土のオークションで手に入れた琉球王朝の廃藩期の扁額で、首里士族の豊見城盛綱の名前が刻印されている。特に古陶器、三線などは文化財級といえるものも多く、県立博物館・美術館や県内の市町村博物館の特別展への出展依頼も相次ぐ。「琉球の古陶集」を発刊した。89年からは毎年企画展を開催し、その都度未公開品を展示する。

 今年は開館50周年を迎え、自身で12枚描いた「幻のコザ風景」の記念カレンダーを発行した。コロナ禍の収束は不透明だが、伊禮館長は「記念展の準備を進めている。今や個人の財産ではなく市民、県民共有の宝、遺産と思っている。何とか実現したい」と決意を示した。

 開館時間は午前9時半~午後4時半(月曜休館)。入館料は大人300円、中高校生200円、小学生100円、団体割引あり。問い合わせは(電話)098(932)0028。
 (岸本健通信員)