うるまPFOS流出 日本への通報 判明翌日 米軍、濃度や量把握せず


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消火用水流出について米軍関係者の説明を聞く国や県、うるま市職員ら=12日午後、うるま市昆布(ジャン松元撮影)

 米陸軍貯油施設(うるま市)から、有機フッ素化合物で汚染された消火用水が流出した。流出は10日に貯水槽の定期点検時に判明し、発生はそれ以前だったとみられる。排水路がつながる天願川では釣りを楽しむ人たちもいるが、日本政府への通報は判明翌日の11日夕になってからで、米軍が公式に発表したのは丸2日たった12日午後6時ごろだった。施設の管理から事故の覚知、通報まで、ずさんづくしだった。

 米軍の説明では、貯水槽は2020年から使用はしておらず、週2回の定期点検を行っている。貯水槽の水量が前回点検時と異なっていることなどから、数日前の大雨時に雨水が入り込んでタンクからあふれ出した可能性があることに気付いたという。あふれた汚染水は、排水路を通じて基地外に流れ出たとみられる。

 12日午後に国、県、市による現場視察の際、米側は「周辺の安全を害すことはない」と主張したが、汚染水の流出量や、含まれていたとされるPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)の濃度を正確に把握できていない。

 県幹部は「PFOSは米本国でも問題視され、含有しない消火剤への切り替えも進んできている。危機管理意識がないと言わざるを得ない」と批判した。

 米側から通報があった11日夕、外務、防衛両省は遺憾の意を伝え、基地立ち入りを求めた。政府関係者は「雨が降ったという程度で漏れ出るのは問題だ」と不快感をにじませた。

 通報を受けて国や県、うるま市の職員は11日夜になって現場に駆け付けたものの、漏れ出したという泡や水の形跡はなかった。県や市は基地周辺や天願川で採取した水の分析を進めるが、市幹部は「(時間がたって)もう意味がないかもしれない。とんでもないことだ」とこぼす。

 2日夜に発生した米軍ヘリ津堅島不時着でも、県への通報は約3時間半後だった。県は沖縄防衛局や米軍に対し、事故が発生した場合の迅速な情報提供を申し入れたばかりだったが、直後の汚染水流出で情報提供が再び遅れた格好だ。

 陸軍貯油施設の立ち入り後、県の溜(たまり)政仁基地対策統括監は「環境に関わる問題は一日も早く(情報を)出すべきだ」とくぎを刺した。

  (明真南斗、知念征尚)