米軍「予防着陸」に県反発 ヘリ津堅不時着 矮小化、「県民と認識違う」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
不時着した米海兵隊のUH1Y多用途ヘリを修理する米兵ら=5日、うるま市の津堅島

 2日に米軍普天間飛行場所属のUH1Y多用途ヘリがうるま市津堅島の畑に着陸した事故で、「予防着陸」として安全な措置を強調する在沖米海兵隊と、「不時着」として抗議する県の間で認識に違いが出ている。機体の異常が原因で、民間の生活地域に突如航空機が降り立つという事態の深刻さを過小に捉える米軍の認識は、これまでも地元の反発を生んできた。

 在沖米海兵隊は琉球新報の取材に、「予防着陸」を「警告表示の点検のために安全で管理された場所に着陸すること」、「緊急着陸」を「故障時に最寄りの場所になるべく早く着陸すること」、「不時着」を「制御不能で着陸して損傷すること」と定義を説明した。

 在沖米海兵隊のニール・オーウェンズ政務外交部長は8日、津堅島を訪れて地元住民に経緯を説明した席で、「警報確認時に津堅島が近くにあったため着陸した。建物から離れた広い土地で安全が確保できると判断した」と述べた。

 警告はエンジン回転数に関するものとしているが、具体的な故障箇所については言及を避けている。在沖米海兵隊は「予防着陸」であることを理由に、県の抗議の呼び出しを拒否した。

 これに対して県は、ヘリが民間地の畑に着陸したことから「不時着」と表現してきた。県基地対策課は「不時着」の定義を「何らかの異常で、航空機の離着陸が想定されていない場所への緊急的な着陸」とし、民間空港などへの「緊急着陸」と区別している。

 謝花喜一郎副知事は8日の田中利則沖縄防衛局長らへの抗議で、「予防着陸」の表現に対し、「県民と認識が違う。現場は民家から120メートルの距離で、人命財産に関わる重大事故につながりかねない」と懸念を伝えた。

 日本政府は、今回の事故が「不時着」「予防着陸」のどちらに該当するかと考えるのか。琉球新報は沖縄防衛局に質問を投げたが、「『不時着』については一概に定義するのは困難」と明言を避けた。

 航空機事故に対する米軍と県の認識が異なった事例は過去にもある。2016年12月に、名護市安部で米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した事故だ。

 機体は浅瀬で大破し、残がいは周辺海域まで散らばった。しかし、事故について米軍は「着水」、防衛省は「不時着水」という発表だった。これに対しても、県は当時の翁長雄志知事が「機体が大破している状況から『墜落』と認識している」と表明し、重大事故として抗議した。

 在沖米海兵隊担当者は16年のオスプレイ事故について「詳細は把握していないが、多くの情報源では『墜落』と表現されている」と本紙取材に答えた。
 (塚崎昇平)