酒造組合・オリオン 酒税軽減「卒業」言及 自立示し軟着陸図る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年で期限が切れる沖縄復帰特別措置法に基づく酒税軽減措置の存廃を巡り、県酒造組合とオリオンビールは10日に開催された自民党の沖縄振興調査会で、ともに終了時期について言及した。酒造組合は今後10年程度、オリオンは5年での終了を考えていると明らかにした。50年に及ぶ「激変緩和」策の度重なる延長に対し、特定産業への優遇措置として必要性を疑問視する声も年々強くなっている。両者は自立への道筋を描き「出口戦略」を自ら示すことで22年度以降の延長につなげたい思惑もにじむ。

 酒税の軽減措置は、1972年の日本復帰に伴い、県内で数少ない製造業保護などを目的に導入された。復帰前から県内で酒類を製造している製造場で造られ、県内に出荷される酒類を対象に、泡盛は35%、ビールなどその他酒類は20%が軽減される。県の資料では復帰した72年度から2018年度までの軽減額の累計は約1343億円に上る。

 ■「最悪」を回避

 10日の調査会の出席者によると、県酒造組合は「22年に軽減措置がなくなり価格に転嫁すると、泡盛離れが進む」として、引き続き酒税軽減の適用を前提とした上で、35%の軽減率を段階的に縮小し、10年かけて廃止していく案を説明した。全酒造所で軽減幅を一律に縮めていく案と、出荷数量によって3グループに分け、小規模な酒造所は緩やかに縮小していく案の2パターンを想定している。

 段階的な縮小の開始時期は、新型コロナウイルスの影響が長期化したことから、コロナ禍の収束後の開始を要望する。軽減措置の終了後を見据え、県外、海外出荷時の物流コスト支援なども求めている。

 復帰特別措置の「単純延長」に対する批判が強まり、期限の来年5月で終了するという「最悪の事態」(同組合関係者)を回避するため、22年以降の延長と終了後の支援策を確保し、軟着陸を図る考えだ。

 取材に対し、佐久本学会長は「現在の35%軽減の延長が理想だが、いつまでも甘えるわけにもいかない」と話し、県外や海外への出荷割合を高めることで「自立」を目指す方針だ。

 ■上場念頭に

 オリオンビールは、早瀬京鋳(けいじゅ)社長や亀田浩取締役兼常務執行役員CFOらがオンラインで調査会に参加した。出席者によると、オリオンは「5年をめどに株式上場」を目指しているとして、「5年で(軽減措置から)卒業する」との期限を示したという。

 21年3月期に海外事業が初めて黒字化したことを報告し、沖縄ブランドを県外、海外へ発信している意義を強調。ビジネス面のほか、シングルマザー支援や奨学金による教育問題の解決など、地域貢献についても言及したという。亀田氏は取材に対して「内容について話すことはない。酒造協(県酒類製造業連絡協議会)との調整はこれからだ」と話した。

 オリオンビールは19年に、米カーライル・グループと、野村ホールディングス子会社が出資する特別目的会社、オーシャン・ホールディングスによって買収された。県内の金融関係者は「事業が拡大するのは良いことだが、税金が原資となって株主の上場利益に直結することには違和感を覚える」と指摘した。

(沖田有吾、中村優希)