視覚障がい者同行援護 ヘルパー不足深刻化 利用者、希望時間使えず


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ヘルパーステーション大翔の嵩元理恵さん(右)と共に歩く比嘉信子さん =4月、那覇市内

 視覚障がい者の外出時の移動を支援する障害福祉サービスの「同行援護」を巡り、沖縄県内でヘルパーの不足が続いている。那覇市は今年2月から支給時間を見直し、時間数の増えた当事者から歓迎の声が上がる。ただ、ヘルパーを派遣する事業所は「人が足りず利用者のニーズに対応できない」と頭を悩ませる。沖縄大学の島村聡教授は、1人のヘルパーが複数の業務を兼ねる現状にあるため「同行援護に専念できるヘルパーは極めて少ない」と指摘する。

 同行援護は、視覚障がいで移動が困難な対象者に、代筆や代読を含む移動に必要な情報を提供するほか、外出先での移動援護などを行う。実施主体は市町村で、所得に応じた自己負担がある。同行援護の従業者養成研修を受け、各事業所に登録するヘルパーが支援する。

 「うれしい、大歓迎だ」。網膜色素変性症で弱視の本永美代さん(69)=那覇市=は、月16時間だった支給時間が46時間に増えた。これまでは通院時など必要最低限の頻度で利用し“時間の節約”をしてきた。「今後は買い物やウオーキング時などで支援をお願いしたい」と考える。

 現在はコロナ禍で外出を控えている。ヘルパーが不足している状況から、新型コロナ収束後に支給時間を希望通り消費できるのか不安もある。「必要な時に利用できるようになるのが理想だ」と語った。

 ヘルパーを派遣する事業所側の反応は複雑だ。「時間数を増やす前に、受け入れができる体制の構築が必要だ。現状のままでは限界がある」。那覇市国場にあるヘルパーステーション大翔の植田一輝代表(37)は危機感を募らせる。時間数が増えた利用者から依頼を受けるが、人手が足りず、希望通りの時間に派遣できていない。「時間数の増えた利用者の対応に追われ、依頼があっても新規利用者を受け入れる余裕がない」と吐露した。

 市障がい者生活支援センターゆいゆいの、ピアサポーター・比嘉信子さん(64)は「時間を支給されても利用できないという矛盾が生じる。非常に心が痛い」と語った。

 那覇市の担当者は「他市町村の状況も見ながら基準量の見直しを行った」と説明する。2月以降、支給時間の見直しを希望する申請は多数あるが、現時点では、市がヘルパーの養成研修などを開催する予定はないという。 (吉田早希)