土地規制法成立 外国資本の土地取得を制限できず 調査手法への課題は置き去り


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 【東京】16日に成立した土地利用規制法は、問題となる具体的な行為、規制の対象区域をはじめ、不明な点だらけのまま審査を終えた。調査内容を巡っても思想調査が行われる可能性が条文上排除されていないなど課題は次々浮かんだが、具体的な改善案が示されることはなかった。

 そもそも法案は策定の根拠となる立法事実が明確になっていなかった。政府は、外国資本により防衛施設周辺の土地が買収されることへの安全保障上の懸念から、規制を目指すと説明してきた。

 だが、法案策定に先立ち防衛省が全国約650の自衛隊や米軍基地の隣接地の土地所有者7万8920人を調べた結果、外国人が所有者だったのは7筆だけ。防衛施設の運用に支障が生じるような土地利用も確認されていないという。

 代わって政府が打ち出したのが、外国資本の土地買収に対する国民の「不安、懸念、リスク」(小此木八郎領土問題担当相)だ。小此木氏は、北海道の航空自衛隊千歳基地、長崎県の海上自衛隊対馬防備隊の周辺における外国資本の土地取得例を明示し、地域の不安に応える必要を訴えた。

 だが、千歳基地周辺の土地買収事例は同基地から3キロ離れている。防衛施設周辺約1キロを対象区域とする今回の法案ではそもそも調査対象とならず、地元の不安に応えられるものになっていない。対馬の例も観光目的とされ、外国資本による土地買収自体を防ぐ権限がない今回の法案の実効性には疑問が残る。

 国会審査では、土地の利用情報収集に公安調査庁や内閣情報調査室などの情報機関が協力することや、思想調査に及ぶことも「条文上、排除されていない」との認識を示した。実際には行わないとしているが、調査手法への懸念も深まっている。
 (知念征尚)