中部病院コロナ集団感染 公表巡り認識違い


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院内クラスター発生や患者17人が亡くなったことの公表が遅れた経緯などを説明する玉城和光院長(左)=1日午後、うるま市の県立中部病院

 新型コロナウイルス対策の中核となっている県立中部病院で発生した大規模クラスター(感染者集団)に関する会見を止めたのは誰なのか。7月1日の記者会見で、病院は直前で県に止められたと訴え、県は公表基準がないまま会見を開くことの問題点を指摘しただけだと説明し、意見が食い違う。死者数最大のクラスター発生という重要局面で、コミュニケーションの齟齬(そご)が露呈した。

 中部病院の玉城和光院長の記者への説明によると、感染者がクラスター基準の5人を超えた5月31日と、院内の感染者が急増した6月7日、県に記者会見での公表を打診した。7日に県の了解を得て、11日に会見を開く予定だったが、10日に県から届いたメールを読んで中止を決めたという。

 玉城院長の7月1日の会見後、県病院事業局の中矢代真美医療企画監は報道陣に、メールの中身について「公表基準がない中、マスコミを使う形での記者会見は現場が混乱するという意見もある。そこは注意を要すると思うが、それを踏まえて病院として行うなら、その意思を尊重するという内容」と説明。文面の最後に「会見するならオンラインで局長も出る」と書いたことを理由に「中止の意図はなかった」と釈明した。

 メールを受信した玉城院長は「中止を求めていると受け取った」として、このメールが会見中止の最大の理由だと説明した。県は「職員を混乱させない方法を選んだのかなと忖度(そんたく)してしまった」と、病院が主体的に決めたと認識した。

 6月7日にゴーサインを出しながら、なぜ会見前日の10日に、病院側を惑わせるようなメールを送ったのか。中矢代氏は「専門家」から公表基準がないままの会見を開くことの問題点を指摘されたと説明した。しかし、「専門家」が誰なのかは明かさなかった。

 また、会見中止後、早期の公表基準作成を非公式に求める玉城院長に対して、県は明確な回答を出さなかった。「公表基準がないことで会見できないのなら、なぜ作らないのか」との記者の質問に、中矢代氏は「今から作る」と言葉少なに答えた。

 結果的に6月30日の県議会でどたばたの公表になり、中矢代氏は「県民や医療従事者の皆さんに不安を与えてしまった結果になったことは申し訳なく思っている」と謝罪した。