沖縄戦の体験学習どうすれば…焦る学校現場 コロナ禍、戦跡巡り3割減


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルスの感染拡大は小中高校の「戦跡巡り」にも大きな影を落としている。県教育委員会の調査によると、複数回答で感染拡大前の2019年度は小中で計336件だったが、20年度は計217件になり、3割以上(119件)減った。県立学校は19年度34校から20年度10校になった。21年度は慰霊の日直前の約2週間、多くの小中高校が感染防止のために休校し、平和学習の日程の再調整が必要となった。識者は「今後の平和教育のあり方を見直す契機にすべきだ」と指摘した。

 今回の集計結果は、小中学校は学校や学年、学級単位などで実施した数となる。県立学校では実施した学校数となる。

 慰霊塔訪問や戦跡巡りの実施数は、小学校で19年度235件から20年度164件になり71件減、中学校で19年度101件から20年度53件になり48件減った。県立学校は20年度、当初計画で26校が戦跡巡りを予定していたが、そのうち16校が実施を見送った。

 沖縄市の美里高校は20年度、読谷村のチビチリガマやシムクガマなどで平和学習を予定していたが、中止した。21年度も実施のめどが立っていない。同高教員は「平和学習の機会をなくさないよう方法を考えている」と話した。

 糸満高校も、20年度は2、3年生の野外学習を中止した。2年生は地域の戦跡や慰霊塔を歩いて回る予定だったが、感染防止のマスクを着用しながらの実施は熱中症を起こしやすい。3年生はバスで移動し、嘉数高台などを回る予定だったが、バス移動は長時間の密状態になりやすいことなどから中止した。同校担当者は「本年度はどうしても実施したい。体験を伴う平和学習が難しくなっていることに強い焦りを感じるが、命を守るための感染防止も大切だ」と葛藤を語った。
 (嘉数陽)