【識者談話】体験者の高齢化とコロナ禍…平和教育、今こそ議論を 吉浜忍氏(沖国大元教授)


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吉浜忍氏(沖国大元教授)

 沖縄戦体験者の高齢化が進み、あと数年で体験者による講話はできなくなる。新型コロナウイルス感染拡大でさらに難しくなった今、これを機会に、今後の平和教育をどう進めるべきかしっかり議論すべきだ。生徒の主体的な学びを視点とした平和教育の確立を、今こそ目指してほしい。

 体験者らによる講話が減った一方、映像視聴は微増している。これは受け身的な学びの一つだ。しかも体験者を目の前にしていない分、浸透力も低い。

 平和教育は、生徒自らが調べたり発表したりして、考える力を養う。例えば、密にならないよう少人数で戦跡調査をしたり、自分たちで映像化したりする。体験者を訪ねてもいい。他の生徒に発表する方法はどうかと考える。

 生徒の主体的な学びを促すためには、教師は当然、それ以上に勉強しなければならない。ほとんどの自治体が市町村史を作成し、地域の証言も掲載されている。身近な沖縄戦を学ぶ教材になる。

 新型コロナを理由に平和教育を止めるわけにはいかない。新型コロナの終息を待たず、体験者に依存しないような、今後を見据えた平和教育を模索する時だ。
 (沖縄近現代史)