沖縄県産黒糖の在庫、過去最多の1万6000トン 販路拡大追い付かず


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 沖縄県黒砂糖工業会(西村憲会長)は22日、那覇市のJA会館で会見を開き、沖縄県内8離島にある黒糖(含蜜糖)製糖工場や県内外の流通業者が抱える黒糖の在庫が、過去最多の1万6千トンに達することを明らかにした。同数値は約2年分の生産量で、金額にして37億円に上る。原料となるサトウキビの増産ペースに販路の拡大が追いつかず、過剰生産の状態になっている。

黒糖の在庫問題について説明する(左から)西表糖業の上原直彦社長、普天間朝重理事長、西村憲会長、宮古製糖の渡久山和男社長=22日

 工業会によると、国によるサトウキビ増産プロジェクトなどの支援もあり、沖縄黒糖の生産量はここ数年はおおむね9千トン台で推移している。一方で、年間の需要は年7千~7500トンにとどまっている。

 2020・21年産サトウキビを原料にした黒糖生産量は9500トンを見込んでいるが、需要と供給バランスを考慮すると約8千トンの生産量が望ましいという。

 在庫は18・19年産から発生していたが、20年以降は新型コロナウイルスの影響もあり、土産品や県内全体の消費落ち込みで在庫量がさらに膨れあがった。

 黒糖に糖蜜を加えた加工黒糖など類似商品との差別化が曖昧なことや、安価な輸入黒糖との激しい競合も、売り上げが伸ばせない要因になっている。白砂糖と比べ、国の糖価調整制度に基づく交付金がないなど支援が薄いことも、黒糖の製糖業者を苦しめている。

 西村会長は、工業会では販路拡大に向け試行錯誤しているが、民間だけの力では短期間で結果を出すことは難しいとした。その上で「これ以上在庫が積み上がれば、製糖工場は来期以降、操業できないほど危機にひんしている」と窮状を訴え、在庫解消のため国や県に支援を求めた。また、県民に対しても消費拡大への協力を呼び掛けた。

 工業会副会長を務める、JAおきなわの普天間朝重理事長は、安定供給を目指した国の取り組みは評価できるものの、需給バランスの均衡が取れなければ工場経営の疲弊につながると指摘。「(製糖工場が点在する)離島の経済や島民の生活を守るためにも、在庫解消は急務だ」と訴えた。