かりゆしウエアの売れ行き低迷…製造12%減 8年ぶりに40万枚下回る


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かりゆしウエア(資料写真)

 2020年のかりゆしウエア製造枚数(下げ札発行枚数)が前年比12%減の37万4525枚に落ち込んだことが、県のまとめで分かった。販売の低迷により、8年ぶりに40万枚を下回った。新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅で過ごす時間が増えた県民のライフスタイルの変化や、観光客需要の低迷などが背景にあるとみられる。縫製業界の関係者は「収束の見通しが立たず、今年も売れ行きは厳しい。県民に広く愛される服を廃れさせてはいけない」と話し、需要の掘り起こしなど新たな取り組みの必要性を感じている。

 夏を中心に沖縄の正装として定着するかりゆしウエアは、2000年の九州・沖縄サミットをきっかけに認知が急速に広がった。国が環境への配慮から夏場の軽装を促す「クールビズ」の提唱もあり、ビジネスからプライベートまで県内では幅広く浸透している。

 県の統計によると、過去最高の49万3035枚を記録した14年をピークに、近年は45万枚前後の製造で推移していた。しかし、20年は40万枚を割り込み、12年の38万5965枚以来の水準まで落ち込んだ。

 かりゆしウエアを認証する下げ札を発行する県衣類縫製品工業組合によると昨年は、例年なら売り上げのピークを迎える3~6月に新型コロナ感染拡大で外出自粛や在宅勤務が浸透し、買い控えの傾向がみられたという。入域観光客数も激減し、土産や滞在用、リゾートウエディング目的の購入が減ったという。

 働き手の主力は家庭を持つ女性が多く、新型コロナの影響で子どもが休校になると自身も休まなければならず、こうした状況も製造に影響を与えている。

 縫製組合の美濃えり子事務局長は「普及するかりゆしウエアの8割は男性用だ。レディースやユニセックスなデザインを探りながら、在宅勤務でも着てもらえるような提案も模索したい。ECサイトも強化し、外出しなくても気軽に購入できる環境にも取り組みたい」と語り、巻き返しを狙っている。 (小波津智也)

 かりゆしウエアとは…県内で夏を中心に広く定着している軽装の様式。1970年、沖縄観光連盟が発売した「沖縄シャツ」を起源に、2000年に現在の名称に統一された。同年の九州・沖縄サミットでは各国首脳が着用し、これをきっかけに広く普及するようになった。(1)県産であること(2)沖縄らしいデザインであること―が定義で、沖縄の伝統染織物、自然や文化などをモチーフにしたデザインが特徴。裾は外に出すのが一般的で、近年はビジネスだけでなく冠婚葬祭など幅広い場面でも着用されている。