「透さんの残した音楽これからも」 作曲家・中村透さんしのび座談会 追悼公演も有料配信


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中村透さんとの思い出などを振り返る(左から)坂元勇仁さん、瑞慶覧尚子さん、佐藤信さん、比嘉康春さん=4月26日、南城市

 作曲家の故中村透さんを追悼する収録公演「中村透再会コンサート~ありがとう、透さん~」(中村透追悼公演実行委員会主催)の有料配信が23日から始まった。南城市の中村さんのアトリエの前庭で行われた座談会では、劇作家の佐藤信(まこと)さん、元県立芸術大学学長の比嘉康春さん、作曲家の瑞慶覧尚子さんが参加した。プロデューサーの坂元勇仁さんが聞き手を務め中村さんとの出会いや思い出を振り返り、中村さんが残した功績など意見を交わした。座談会の一部を紹介する。

 瑞慶覧さんと中村さんとの出会いは1975年にさかのぼる。当時小学校3年生だった瑞慶覧さんは、通っていた音楽教室で中村さんが特別講師を務めたことで、中村さんから音楽を学ぶようになった。中学の頃に作曲家になりたいと音大に進学するため指導を受けた。「人に対しての感謝の気持ちを持ちながら、作品に対しても準備段階から丁寧だった。先生の生き方から多角的に物事を見る作曲家の在り方を教えていただいた」としのんだ。

中村透さん

 比嘉さんは75年、師匠の野村流古典音楽保存会の安富祖竹久さんが開いた演奏会に中村さんが訪れ、郷土月刊誌「青い海」にその時の気持ちをつづった文章を読み、親しみを覚えたと振り返った。実際に中村さんと会ったのは、その10年後だったといい、知り合いを通じて交流を深めた。中村さんの創作「月の山の端に」や「キジムナー時を翔ける」などにも出演した。「古典音楽や組踊など大変勉強なさっていた。アジアと深く交流し、自分たちのアイデンティティーを深く見つめ直すことで、これからの沖縄音楽はもっと広げられると助言をしてくださった」と話した。

 佐藤さんと中村さんは南城市文化センターシュガーホールが開館した94年以来の付き合いで、オペラ「あちゃーあきぬ島~南島幻想曲~」などに携わった。佐藤さんは「演奏家を通して聞こえる音楽は、現実に(作曲家が)いないという悲しみよりもむしろそこで出会える。透さんの残した音楽がこれから演奏される度に、透さんが伝えようとしたことや存在が残る。これから透さんの音楽がどう生きていくか、児童合唱曲を聴きながら考えていた」と話した。
 (田中芳)

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 配信チケットは2500円。7月7日午後11時59分まで視聴できる。DVDの価格は3500円、ブルーレイは4500円(いずれも特典付き)。配信チケットはQRコードから購入できる。問い合わせは音楽工房凛(當眞)(電話)090(6428)9933。