prime

懲罰動議、流会、人事案否決…混乱する宮古島市議会 市議選への思惑指摘も<ニュースのつぼ>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
座喜味一幸市長の不信任決議案に賛成し挙手する議員ら=22日午後、宮古島市議会

 【宮古島】宮古島市議会6月定例会は、座喜味一幸市長の不信任決議案提出や野党議員による「お前」発言への懲罰動議、し尿処理施設整備事業を巡る市当局の答弁を不満とした野党退席による流会など、混乱した。一方、これまで2度にわたり、多数を占める野党の反対で否決されてきた副市長人事案が賛成多数で可決され、野党の半数が反対に回って市長不信任案は否決されるなど、一枚岩だった野党に分裂の兆しも見える。

 1月の市長選で野党全員は下地敏彦氏を支持し、それを破って座喜味市長が初当選した。以来、野党は「数の力」で攻勢を仕掛けてきた。副市長人事やサトウキビ農家補償など市長肝いりの案は否決され続けた。

 6月定例会でも、新型コロナウイルス対策として市内事業者に最大10万円を給付する助成金事業(予算約5千万円)を含む補正予算案に対して「待った」を掛けた。同事業予算を約1億円に倍増させた修正案を野党全員の賛成多数で可決した。予算執行権者は市長のため、20万円が給付されるかは未知数だ。

 与党市議の一人は「市議選に向けた野党の実績づくりだ」と批判した。「市長の支援策が不十分だと強調して、野党が倍増させたとなれば印象がいい。仮に市長が執行しなければ批判材料になる」

 野党市議の一人は、座喜味市長が選挙戦で掲げた観光客のコロナ陰性証明提示義務化など複数の公約を断念、変更している点に触れ「政策実行力に欠けている」と批判した。修正案提出については「事業者の困窮を考えると10万円では足りない。倍増分は予備費から支援に回すのだから総額は変わらない。できうる支援とするなら受け入れるべきだ」と強調した。

 野党分裂について市当局側には「市議選に向けたイメージ回復戦略の影響」と見る向きもある。下地敏彦前市政時に「追認機関」(市幹部)と一部でやゆされていた野党にとって、陸自用地を巡る収賄容疑で前市長が逮捕、起訴された事件は10月の市議選を前に深刻なイメージダウンだ。

 市幹部の一人は「議案によって是々非々の立場を取ることで、下地市政を支持してきたというイメージを拭い去りたいのだろう」と推測した。

 (佐野真慈)