石垣市、ワクチン接種進む 高齢者の8割が6月完了見込み 医療体制維持に専門家が注目


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 【石垣】新型コロナウイルスワクチン接種で、沖縄県・石垣市の8割以上の高齢者がまもなく2回目の接種を終える。市は5月に高齢者を対象とした集団接種を始め、6月中には完了する見込みだ。また、市は集団接種に先駆け、高齢者施設の入所者と職員にもワクチンを接種した。5月からの感染拡大時に、重症化しやすい高齢者層が医療提供体制を逼迫(ひっぱく)させなかったことに、専門家らから注目が集まっている。

石垣市では高齢者への新型コロナワクチン接種が進んでいる。月内には市内の高齢者の8割が2度目の接種を終える予定だ=5月17日、石垣市

 市によると、市内の65歳以上(1万1107人)の1回目ワクチン接種率は、7日時点で、82%となっている。27日には、ほぼ同数の約82%が2回目の接種を終える見込みだ。県によると、県全体の65歳以上の1回目のワクチン接種率は、24日現在で、49・5%、2回目は17・5%にとどまっている。県担当者は「県平均からみれば石垣の接種はかなり進んでいるとみていい」と話す。

 市内では5月に感染が拡大し、最大で1日に25人の感染者が出たこともあった。ただ、高齢者施設などでのクラスター(感染者集団)は確認されなかった。

 ワクチン接種が進む背景には打ち手の確保がある。市は4月、重症化リスクの大きさなどを踏まえ、市内の民間病院と協力して高齢者施設へのワクチン接種を始めた。加えて県医師会などと連携し、集団接種の打ち手を確保。5月以降、週末にはこれらの医療従事者を市内に招き、最大で1日に1200人に接種できる態勢を作ってきた。

 県の専門家会議の委員も務める県立中部病院の高山義浩医師は、石垣の取り組みについて「医療崩壊を起こしにくい状況になった」と話す。高山医師は石垣で感染が拡大した中でも高齢者施設での感染が広まらなかったことは、ワクチンの効果が現れたものと分析。観光客など渡航者の多い石垣での実績は、他の観光地などのモデルになりうるという。首相官邸のツイッターも石垣市の取り組みを「参考事例」として紹介し、注目を集めている。

 一方、高山医師は感染リスクの高い層への接種を早急に進めなければならないとも話す。観光客を受け入れるためには、観光客と接触する機会のある飲食店従業員などへの接種を進める必要があるという。

 市は28日以降、観光関連事業従事者らへの優先接種を始める。また7月9日以降には64歳以下への接種を開始する。8月19日までに2度目の接種を終える見込みだ。ただ県医師会は、7月に石垣へ医療従事者を派遣する予定はないといい、今後の接種は主に市内の医療従事者が担うことになる。

 市の天久朝仁市民保健部長は「平日の打ち手確保が課題」と話し、今後、地域の医師会などと調整していくと説明している。(西銘研志郎)