「猛烈な台風」でも推定精度72% AIが台風の勢力を解析 琉大研究チーム発表


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魚眼レンズ風の加工を施した衛星写真。中心が拡大されることでAIが台風の目を認識しやすくなる。台風周辺に分布する雲も認識でき、勢力の推定精度を高めた

 琉球大学工学部の宮田龍太助教と理学部の山田広幸、伊藤耕介准教授ら共同研究チームはこのほど、単一の衛星画像から台風の勢力を高精度に推定する人工知能(AI)を開発した。台風の衛星画像を魚眼レンズ風に加工し、台風の目や中心付近の雲分布を強調した素材をAIに処理させることで、気象学の専門家と似た視点を獲得し、先行研究よりも高い推定精度を達成した。最大勢力に当たる「猛烈な台風」で72%の推定精度を達成するなど、防災や減災につながることが期待される。

 研究では、先行研究で写真を解析する際に用いられた5層構造のAIではなく、16層のAIを採用した。台風の細かい雲のパターンを捉えられるようになったが、当初は「猛烈な台風」では低い精度しか得られなかった。

 「猛烈な台風」の推定精度を上げるため、研究チームは気象学の専門家の知見を取り入れた。

加工されていない衛星画像。単純に拡大するだけでは、AIが台風の目や台風周辺に分布する雲がうまく認識できないという(宮田龍太助教提供)

 「台風の目が画像にはっきり現れているか」「目の周りに雲が同心円状に分布しているか」などの特徴をAIに学習させるため、台風の衛星写真を魚眼レンズ風に加工した。AIが加工処理された画像を分析することで、全体の推定精度は76・8%、「猛烈な台風」でも72%と飛躍的に精度が高まった。

 宮田助教は「台風は多くの被害をもたらすが、勢力は人による推定で結果にばらつきがある。今回の研究でより精度の高い推定ができるようになった。今後は台風勢力の解析や予測を行う予定で、台風が急速に発達する前兆をAIで捉えたい」と話した。研究成果をまとめた論文は6月21日、国際誌「Scientific Reports」に掲載された。