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「別姓でも戸籍が一緒になれるまで」 申し立てた女性の思い 最高裁、夫婦別姓認めず


社会
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別姓での結婚を望む東京都の看護師の女性(左から2人目)と夫、3人の息子=2020年(女性提供、画像の一部を加工しています)

「夫婦別姓認めず」最高裁合憲

最高裁大法廷は23日、夫婦別姓を認めない民法などの規定を合憲と判断した。慰霊の日を思いながら待った司法判断は、「がっかりする結果」だった。申立人の1人で、東京都の40代の看護師の女性は、大学時代を沖縄で過ごした。選択的夫婦別姓制度の導入を望んでおり、「先祖を大切にし、独特の名字が多い沖縄の人たちにも理解してもらえたら」と訴えた。

「沖縄にも理解広げたい」

東京都出身。保健師活動に歴史のある沖縄で医療を学びたいと、1990年代に琉球大に入学した。美しい海と親しみやすい県民性。東京とまるで違う文化に触れ、気の置けない友人たちと学生生活を謳歌(おうか)した。一方、95年に米軍人による少女乱暴事件が起きた際は「ここではまだ戦争は終わっていない」とショックを受けた。

卒業後は東京に戻り、看護師として働いた。2001年、小学校の同級生だった男性と事実婚をした。結婚したい。でも、改姓はしたくないし、相手にも強制したくない。生まれ持った名前のままでいる道を、やむなく選んだ。

挙式後すぐ、子どもを授かった。事実婚夫婦の場合、婚外子として母親の戸籍に入る。子どもに不利益が及ばないよう、出産前に婚姻届を出し、産後、ペーパー離婚した。3人の息子は夫の戸籍に入り、夫の姓を名乗っている。

日常生活に大きな支障はない。だが、事実婚では緊急の医療同意や承諾ができないこともある。働けなくなっても配偶者控除は適用されない。「生死に関わる時に家族を守れない」と、危機感を募らせた。別姓での法律婚を希望したが、婚姻届が受理されず、18年に家事審判を申し立てた。

家裁、高裁と退けられ、最高裁へ。期日が6月23日と知った時は「不思議な縁を感じた」という。「喜びでも、悔しさでも、私にとって忘れられないであろう日が、沖縄の忘れてはいけない日とつながった」

最高裁でも願いは届かなかった。現在の規定を合憲と判断し、制度の在り方は「国会で議論、判断されるべきだ」とした。女性は23日の判断に失望したとしつつ「司法がだめなら、立法府を動かすしかない。世論に訴え続けていきたい」と前を向く。

今年で結婚20年。夫婦フルタイムで働き、家事も育児も協力して回してきた。「婚姻届を受理されないこと以外は普通の、割と良い関係の家族」だと感じている。ゴールは法廷で勝つことではない。大切な家族と、戸籍上も一緒になれる日まで、声を上げる。

(前森智香子)