【識者談話】住民投票削除は地方自治つぶす行為 高良沙哉氏(沖縄大教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
高良沙哉氏

 市議会は、市民の代表者として市民の声を吸い上げていくべきなのに、市民の意思を確認するための住民投票の実施や住民投票の請求や発議を定めた条文を根こそぎ取り除くというのは、自治をつぶす行為だ。

 自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施を求め市民が市長を提訴し、訴訟が行われているさなかに、別の手法で住民投票できないように、根っこを断ってしまうのは、住民の代表者がやるべきことではない。訴訟が行われる中、市議会は独立機関として、住民投票で市民の意思を反映する意義を受け止めてほしかった。議会は市長に属している機関ではない。市政を支えるために住民の大切な権利を奪ってしまう、今回の決議は信じがたい市民への裏切りだ。

 自衛隊配備に関する住民投票つぶしで条例を狙い撃ちにしたのではないか。自治基本条例は、憲法に則して住民の意思を地方自治に反映させようとした重要な条例で有効に機能していた。まさに自治体にとっての最高法規であった。

 条例改正で「自衛隊のことで市民が意見を言うな」という威圧的な雰囲気も感じる。市民が声を上げたいことは自衛隊問題だけではない。市と議会は、自衛隊に関し、住民の意見を聞きたくないがために、将来にわたって地方自治をゆがめてしまうことになる。

 条例に基づく住民投票で住民の意見を反映させていくのは、憲法の地方自治の考え方を反映した現代的な方式だ。これを今の時代に取り除いてしまうというのは時代に逆行している。

 住民が自分たちの生活に直結する問題に声を上げることを拒絶することは、住民の意思に基づく地方自治を本旨とした憲法の下では許容されない。
 (憲法学)

※注:高良沙哉氏の高は、「はしご高」