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下部リーグへの移籍、葛藤超えた上江田勇樹 「常勝軍団」群馬けん引、B1昇格に貢献<ブレークスルー>


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 Bリーグ記録の33連勝達成、通算52勝5敗で勝率は歴代最高の9割1分2厘―。記録ずくめのレギュラーシーズンを経て、5月にBリーグ2部の王者となり、球団初の1部昇格を決めた群馬クレインサンダーズ。圧倒的な強さを誇ったチームの一翼を担ったのが、昨季加入した那覇市出身の上江田勇樹(興南高―日大出)だ。プロ歴11年の34歳。Bリーグ開幕時から1部でプレーし続け、2部への移籍に「迷いもあった」。それでも「昇格」という新たな挑戦を原動力に、豊富な経験を生かして常勝軍団を支え続けた。

■「厳しい環境」求め

プレーオフ準決勝第2戦 落ち着いたプレーでチームを支える上江田勇樹(右)=5月16日、群馬県のヤマト市民体育館前橋(Bリーグ提供)

 193センチ。シューティンガード、スモールフォワードを担う。左利きで個人技にたけ、日大4年時には点取り屋として関東リーグ、インターカレッジの2冠達成に貢献した。2010年のJBLデビュー後は「プロは得点能力が高い人が多く、そういう選手を守れないと試合に出られない」と守備に磨きを掛けた。攻守にバランスの取れた選手に成長し、16年のBリーグ開幕以降はB1の千葉、富山、新潟を渡り歩いた。

 「B1を目指して本気でやりたい。経験と力を貸してほしい」。群馬からそう声が掛かったのは昨春のこと。デビューから10年、常にトップリーグで活躍し、B2への移籍に対して当初は「正直、すごい迷いはあった」という。

 しかし、昨季はコロナ禍の措置として降格のなかったB1に対し、B2は2位以上で昇格があった。ベテランとして「体の回復が遅くなったりはするけど、常に挑戦者の気持ちを持つことが大事」と、昇格という明確な目標に共感し、移籍を決意した。「自分を高める意味でも、より厳しい環境に身を置きたかった」

 チームは結果的にB1経験者8人を獲得する大型補強を断行し、掲げたスローガンは「前人未到」。優勝候補筆頭の前評判通り、昨年10月の開幕5戦目から連勝街道を走り続けた。試合を重ねるごとに連係が向上し、年が明けても土がつかない。しかし上江田は「20連勝を超えてからはリードを許す、難しい展開の試合が増えた。『どうせ勝つだろう』という雰囲気が出てしまった」と振り返る。

■豊富な経験を還元

B2優勝を決め、喜びを爆発させる群馬のメンバーら=5月24日、群馬県の太田市運動公園市民体育館(Bリーグ提供)

 そんな時、豊富な経験やオールラウンドなプレースタイルを生かして意識したことが二つ。「序盤は主力の外国籍選手もエンジンがかからないので、自分が点を取りに行く。徐々に守備を締めて安定したゲーム運びを心がけた」。ポイントガード陣にも常に「試合の入りが大事」と声掛けし、33連勝という記録達成を後押し。3点弾も含めてシュート成功率は4割を超え、安定した活躍を維持した。チームはB2トップの1試合90・9点の平均得点を記録し、ホーム戦は29試合無敗だった。

 5月のプレーオフでも他を寄せ付けない強さを見せた。準々決勝の山形、準決勝の越谷とも2連勝で退け、早々とB1昇格が決定。課された使命を全うした上江田は「昇格は目標でもあり、成し遂げないといけない課題だった。うれしい気持ちはあったけど、ほっとした気持ちの方が大きかった」と穏やかに語る。茨城との決勝は2戦目を落としたが、チーム全体で「『群馬は強い』ということを見せつけて終わろう」と鼓舞し合い、最終第3戦に快勝して頂点に立った。

 17年に千葉で天皇杯優勝、18―19季に新潟でB1中地区優勝、そしてB2制覇と多くのタイトルを手にしてきた上江田。「3点弾の確率をもっと上げ、平均得点を増やしたい」と向上心は衰えを知らない。6月には群馬との契約継続が発表され、再びトップリーグへと活躍の場を移す。残す目標はただ一つ。「B1で優勝し、そのメンバーの一員になりたい。それができれば、今後の人生にとって大きな財産になる」。来季でプロ12年目。まだまだ歩みを止めない。

(長嶺真輝)