【深掘り】「公表中止」責任の所在は?中部病院のクラスター問題 県と病院に不信感


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県議会終了後に我那覇仁病院事業局長(左)らと話し込む玉城デニー知事(右から3人目)=1日、県議会

 県立中部病院で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した問題を巡り、同院の玉城和光院長は1日の記者会見で、県病院事業局の指示で公表が取りやめになったとの認識を示した。会見の直後に県幹部や担当者は口をそろえて「県の指示」を否定したものの、この日県側から十分な説明はなく、責任の所在は曖昧になったままだ。

 記者会見で中部病院は、7月1日の会見で「公表すべきだと考えていたが県の病院事業局から止められた」と強調。病院側の意向を受け、会見への同席は見送ったという県側は、発表内容に「驚いた」(中矢代真美医療企画監)として、相反する主張を展開した。

 ■すれ違い

 関係者によると、コロナ対応を巡って、もともと現場を担う中部病院と、運営側の病院事業局の間で、意見のすれ違いがたびたび生じていた。知事に近い与党県議は県立病院に県側への不満の声が渦巻いていたと明かし「不満が一気に出たのかもしれない。県も現場の声をもっと聞く必要がある」と語った。自民幹部の1人は「県と県立病院の信頼関係のなさも暴露した形だ」と指摘した。

 ある県幹部は、知事や副知事など、県3役に感染が50人規模に拡大していることが伝わったのは、県議会一般質問で問題が明らかになった6月30日だったと説明する。会見中止の「指示」に県3役の関与を強く否定した形だが、事実であれば、県庁内での情報共有不足も浮かび上がる。

 ■「専門家」

 県議会野党からは玉城デニー知事や謝花喜一郎副知事が説明責任を果たすよう求める声が上がる。与党幹部も早期に玉城デニー知事の口から事情を説明するよう助言した。だが、玉城知事は1日には会見を開かなかった。

 1日の病院事業局と保健医療部の記者説明会で、県は問題の公表のタイミングについて専門家から助言を受けたと説明。だが、その「専門家」の氏名や専門さえ明らかにしないなど、疑念を深める結果となった。

 ある与党幹部は「しかるべき人ができるだけ早く会見を開くべきだ。そうでなければ隠蔽(いんぺい)と言われても仕方がない」と危機感をあらわにする。

 県病院事業局は2日以降、会見を検討しているものの、疑念払拭(ふっしょく)が十分ではない場合、玉城知事ら県首脳の責任問題に発展する可能性もはらんでいる。
 (明真南斗、大嶺雅俊)