対馬丸記念館 支援の輪広がる 平和希求、県内外から賛同者


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「支援やメッセージに勇気をもらった」と語る対馬丸記念会常務理事の外間邦子さん(左から2人目)と職員ら=6月28日、那覇市の対馬丸記念館

 緊急事態宣言の発令を受け休館していた沖縄県那覇市の対馬丸記念館が、6月21日から開館した。「慰霊の日」の23日は例年より多い250人が訪れ、子どもたちが平和を願うメッセージを寄せた。コロナ禍で厳しい運営は依然続く一方、「対馬丸を二度と沈めてはいけない」(対馬丸記念会の高良政勝理事長)との思いに賛同した匿名、大口寄付などの支援が県内外から寄せられている。館を運営する記念会の常務理事で、遺族の外間邦子さん(82)は「館存続への思いを改めて強くした」と話した。

 対馬丸は1944年8月22日、米潜水艦に撃沈され、疎開のため乗船した学童を含む1484人が犠牲になった。記念館1階には、そのうち396人分の遺影が掲示されている。外間さんは乗船した姉2人を失った。「遺影の中の子どもたちの笑顔は、友達との楽しいおしゃべりや何気ない暮らしがあったことを示している。戦争はそれまでの平穏な日常、すべてを奪った」と語る。

 6月23日には、家族連れなど250人が来館した。訪れた子どもたちは「平和とは何か考えた」「一生戦争が起こらない平和な未来でいたい」など、展示を見て多くの感想を残した。

 入館料が収入の多くを占めるが、新型コロナウイルスの影響で来館者数は激減。23日以降も入館者数は再び減少し、協力会費や寄付を充てるが、厳しい運営の終わりはまだ見えない。 6月18日、いとこを対馬丸で亡くした県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者の親泊良子さん(93)が3年かけて制作した万羽鶴を寄贈。それを報じた本紙記事を読んだ読者から匿名で10万円が記念館に贈られた。県出身の両親を持つ大阪府在住の夫婦から100万円の寄付などもあり、記念館存続への後押しとなっている。外間さんは「愛を寄せてくれる方に本当に感謝したい。ここは他にはない、子どもの犠牲を伝える平和記念館。コロナを乗り越え、子どもたちが平和を考える場所として後世に残したい」と力を込めた。

 記念会は県から公益財団法人の認定を受けており、個人や法人の寄付は、所得税や個人住民税、相続税、法人税の優遇措置がある。協力会員も募集中。開館は午前9時から午後5時(最終入館は午後4時半まで)で、毎週木曜は休館。問い合わせは同館(電話)098(941)3515。 (吉田早希)