ゴミ拾い1.6トン!「たった一人」が島民みんなへ 宮古島の大林さん「卒業ラン」


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「たった一人のエコクリーン活動」卒業ランでごみを拾いながら市役所を目指す大林領さん(中央)=6月30日、宮古島市

 【宮古島】「千年先の未来に、できることを少しずつ」。地域おこし協力隊として3年間、宮古島市のエコ活動をけん引してきた大林領さん(39)=大阪府出身=が6月30日、協力隊を卒業した。「たった一人のエコクリーン活動」と銘打ち、くば笠をかぶった姿でリヤカーを引いて拾い集めたごみは3年間で1.6トンに上る。任期最後の30日も「卒業ラン」として約12キロ歩いてごみを拾い、市職員や市民が待つゴールの市役所に着いた。

 大林さんは2018年に協力隊として市エコアイランド推進課に配属された。片手で拾える範囲のごみを見つけたら拾う「ワンハンドクリーンアクション」の浸透を図ろうと、「たった一人のエコクリーン活動」を始めた。

 リヤカーを引き、島内を歩いておじぃやおばぁと語らう。子どもたちがごみを拾って持ってくる。未来に残したい島の情景を撮影し、SNSで発信する。「熱々の天ぷらを差し入れてもらったこともあった。あの味は今も心に残っている」と振り返る。

 毎月数回、島を歩いてごみを拾う大林さんの姿は島内でも話題となった。小学校での環境問題の出前授業や地域住民との清掃活動も増えた。夏祭りなどイベント会場では子どもたちが進んで参加した。「たった一人」が次第に「島民みんなで」に変わっていった。

 市内の企業の協力を得て飲食店や雑貨店で使える「理想通貨」も発行した。ごみ拾いやビーチクリーンに参加、協力した人に発行した。

 30日の「卒業ラン」は市下地与那覇を午前6時半に出発した。市民も参加し、約7時間かけて島を“掃除”した。

 市役所で開かれた卒業式で座喜味一幸市長は「大林さんの3年間の地道な活動こそ、千年先の未来をつくるもの。海を守り、水、森を守る。消費社会の中で大事なことを教えてくれた」と感謝をした。

 卒業祝いの花束を手にした大林さんは「最後のゴールを皆さんとできて良かった。卒業後は来間島でエコガイドツアー兼カメラマンとして頑張る。応援してくれたらうれしい」と笑った。