【深掘り】「かばいきれない」急きょ開かれた知事会見の背景は 中部病院クラスター公表遅れ


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クラスター発生の発表遅れについて説明する玉城デニー知事=4日午後3時41分、県庁(代表撮影)

 県立中部病院で起きた新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)問題を巡り、玉城デニー知事は4日、臨時記者会見を開き、公表が遅れたことを陳謝した。会見で玉城知事は「一刻も早くおわびし、反省のもとに、最善の努力を尽くしていく」などと早期に対応している姿勢をアピールしたが、急きょ会見を開いた背景には与党からの強い働き掛けがあった。

 知事会見前日の3日、謝花喜一郎副知事や我那覇仁病院事業局長らは県議会与党の会派代表者、文教厚生委員会の委員に対して説明会を開いた。その席上、謝花副知事は7日予定の新型コロナ対策本部会議後の会見で、知事が経緯を説明すると述べたという。

 だが、5日には県議会文教厚生委員会で、集中審議が予定されていた。事態を重く見る与党県議たちからは、知事から発言がないまま、委員会を迎えれば「かばいきれない」との声が漏れた。4日に告示された那覇市議選の日程を念頭に「選挙にも全く影響がないわけではない」との指摘も上がった。こうした与党からの意見を受け、県首脳は委員会前に、玉城知事から経緯を説明する「最低限のダメージコントロール」(与党幹部)を選択した。

 県は5日までに、県立病院でのクラスター発生時の公表基準を作成し、病院事業局にクラスターの担当職員を置くことを発表。再発防止策を示すことで早期の幕引きを図りたい構えだ。

 だが、5日の文教厚生委員会で、野党側は県に対して追及を強め、審議は一部で紛糾、8時間半以上に及んだ。ある自民関係者は「しかるべき立場の人に責任を取ってもらう」と述べ、問題の追及を続け、県政をさらに揺さぶる考えだ。

 一方、与党などへの説明会で謝花副知事は中部病院を「沖縄の宝」と表現し、政局に巻き込んではいけないとの認識を示した。ただ、与党からも厳しい視線が県執行部に注がれる。ある与党議員は県政の姿勢に「政局の対象に陥れているのは、自分たちの危機感のなさだ」と嘆息した。

 (池田哲平、明真南斗)